「一緒に虹を、見てみたい」
道路に沿って真っ直ぐ伸びる、屋台の前をウロウロ歩きながら、焼き鳥やらたこ焼きやらを買って、近くのベンチに腰掛ける。
空は雲一つない晴天、濃い水色の秋空が広がっている。
前方に見える特設会場からは、街の中学校か、高校かの吹奏楽部員達の演奏が聞こえてくる。
「いい一日だなぁ」
笑顔の塩見君に、私も笑い返すと、更に大きないっぱいの笑顔を返された。
「恵口さんと一緒にいると、俺、落ち着くんだ。何だろね、誰といるよりも自然と居心地の良さを感じてる」
「そう、言ってもらえるのは嬉しい」
「リラックスできるっていうか……それに、少しずつ笑顔を見せてくれることに、喜びを感じてる」
最初はこんな風に簡単に笑ってなかったよ、と言う塩見君。
「でも、ちょっと前から恵口さん変わったっていうか、何かあった?」
それは、きっとあの夏の事故がきっかけだが、塩見君は恵口さんが私の本当の親ではないことを知らない。