「一緒に虹を、見てみたい」
「恵口さん、こんな低レベルな奴と話さない方がいいよ。行こう」
「は、塩見、お前何言って……」
「かかってこれるもんなら、きてみろよ。ほら」
塩見君の挑発的な言葉に、“クメ”と呼ばれた男子生徒は立ち上がって塩見君の胸ぐらを掴んだものの、塩見君の方が背が高く、その姿は弱々しく見える。
一方で、塩見君も相手の胸ぐらを掴むと、あちらの襟元にギュッと皺が寄る。
「嶋原のこと悪く言ったら、俺が許さないから」
塩見君はいつもからは想像できない、鋭いガンを飛ばすと、強く私の腕を握ってその場を去って行く。
なんだと一気に辺りの人の視線を集め、胸がバクバクしているのもあって、足がもつれそうになってしまう。
「塩見君っ」
「あんな奴らと関わることないから。行こう」
後ろを振り返ると、カップルが追ってくる様子はなく、二人立ち尽くしている。
「あいつ、昔から性格悪いんだよ。ていうか、恵口さんあの二人と会ったことあったんだ」