「一緒に虹を、見てみたい」
雨の降るバス停に着くと、塩見君は西に足を進める。
「恵口さん、笑ってよ」
「あっ、うん、はい」
「はいって」
笑う塩見君に頬をポリポリ掻くと、塩見君は大きなマンションの前で足を止めた。
「ここ?」
「うん、嶋原はこの八階に住んでる」
そうなんだ、初めて知った。私は嶋原君のことを知っているようで、知らないことも多い。
──っと、マンションのエントランスでインターホンを押そうとした時だった。
誰かが自動ドアの向こうからやってきて、その人物を見た瞬間、私は目を見開いた。
「……嶋原君」
私服姿の嶋原君が、携帯と財布を持ってどこかに行こうとしているではないか。
「おす、嶋原」
「?」
私達を見た嶋原君は、誰か分からないのだろう、首を傾げる。