「一緒に虹を、見てみたい」
「俺だよ、塩見。さっき電話した、塩見健太」
「あぁ、ごめん、分からなくて」
「久しぶり、どこ行こうとしてたんだよ」
「飲み物なかったから、買いに行こうと思って」
変わっていない嶋原君は、私と目を合わせて、コクリ頭を下げてくる。
嶋原君が、今、ここにいる……。
私はゆっくり手を伸ばすと、嶋原君の腕をポンポン触ってみる。
「嶋原君が、いる……」
「いるよ」
嶋原君は初対面の私に軽く笑い返すと、もう一度、いるよ。
「もう、会えないかと思った」
「二人とも、俺のこと待ってくれてたんでしょ。本当に、ありがと」
ハッキリ見えていた嶋原君が、やがて輪郭をなくしボヤボヤになって、私はパッと後ろを振り返る。