「一緒に虹を、見てみたい」
何だか、目の前にこうやって嶋原君がいるだけで、十分な気がした。
「なぁ、嶋原。お前と同じ雨人の毛利さんは元気なの?」
「毛利のこと、知ってたんだ。 うん、元気」
「俺等のことは忘れても、雨人の毛利さんのことは忘れないんだよな」
「ごめん」
塩見君は責めているわけではないのに、違う意味に捉えてしまった嶋原君は頭を下げる。
「塩見に恵口、多分俺が記憶をなくす度に話しかけてくれてるんだよな。それでもすぐに忘れてしまう自分が、本当に腹立たしい」
ごめん、と言う嶋原君に首を振ると、塩見君も自分と同じ反応を示す。
「嶋原、明日から、また学校来るんだよな」
「一応その予定だけど、もう学年変わったし、やっぱり俺、留年だった?」
「まぁ……そうだな。留年にはなってるけど、毛利さんと同じクラスだよ」
「そっか」
同級生だったのに、嶋原君がどんどん遠くなっていく。