「一緒に虹を、見てみたい」
腕を辿ると、いつもとは違う真剣な表情の塩見君が待っていて、私は目を逸らそうとした所で、ギュッと力を入れられてしまった。
「私は……」
「俺のことは見ないで、嶋原のことばっかり見てるじゃん。考えてるじゃん」
「それは」
「俺は、恵口さんのことが好きだよ」
早口で言った塩見君が、傘を投げ出して、雨の中私のことを抱き締めてきた。
そして、息をつく間もなく唇が重なり、私は立ち尽くす。
雨に濡れながら、何度も唇を重ねてくる塩見君にビックリして離れると、雨の中塩見君はじっと私を見据える。
「俺のこと、嫌い? 嶋原が帰ってきたら、そっちばっかり」
「……嫌いじゃないよ」
「でも、実際、好きでもないんでしょ」
「それは……」
二人雨に濡れながら立っていると、車がシャーッと横の車道を通って、タイミングよく私と塩見君の足元を濡らしてゆく。