「一緒に虹を、見てみたい」
入り口でチケットを買っていざ館内に入ると、平日の夕方で来場者はポツポツ。
あの時四人で来た水族館に、今日は二人。
私はピンク色のハナゴイや、薄紫のナンヨウハギを見ながら、過去を振り返る。
あの頃は、初めての嶋原君の記憶のリセットに驚くばかりで、今とは気持ちが違った。
私の隣で、同じ水槽を見ている嶋原君の横顔を見ると、彼は楽しそうに笑顔を見せている。
ニジハタに、カゴカキダイ、ショウガサンゴ。
薄暗い室内で、淡い光に照らされる水槽の中を泳ぐ魚は、優雅で美しい。
「俺、この魚好きかも」
嶋原君が指を差したのは、ツノダシ、という黒と黄色の縞模様の、突き出した口とよく伸びた背びれが特徴の魚。