「一緒に虹を、見てみたい」





*

 ──ニッコリ、指で口の端を上げ、笑ってみる。

 笑顔の練習は、私が家族を失ってからの毎日の日課である。

 笑っていても、心にはポッカリ穴が空いたまま。心から笑ったことなんて、一体いつぶりだろう。

 大切な人を失うのが怖くて、考えるだけで恐ろしく、ブンブン首を横に振る。

 もう、散々だ。もう、思い出したくない。

 本来楽しかった、キラキラした家族の思い出に触れることさえできずに、私はとりあえずの笑顔で毎日を淡々と過ごしていた。

 好きな人なんて、大事な人なんて、絶対に作りたくない。

 傷付くのが、傷付けられるのが、もう嫌だった。






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