「一緒に虹を、見てみたい」






~嶋原空也~

 こうやって手術台に乗ったのは、生まれて初めての経験だった。

 ガッとライトが付くと、眩く、目を顰める。

 やがて、注射器から吸引した麻酔が、鼻の奥に絡みつき、猛烈な眠気に包まれる。

 あぁ、この手術が無事に終わったら、俺はこの世界から消えなくて済むのか。

 やっと、あの現象から救われるんだ。

 そして、これからは友達の記憶が消えない。

 俺はまた、一から人間関係を築いていかなくてはならない。

 俺のこと、まだ覚えていてくれた人がいれば、また声をかけてもらえると嬉しいな。




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