「一緒に虹を、見てみたい」
第一章 『大雨の出会い』
~恵口希花《えぐち きか》~
白いミニバンが、高速を南に走る。
私は後部座席に座りながら、緊張で自分の両手を握り締めていた。
「希花ちゃん、今日から宜しくね」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
「やっと一緒に暮らせるわね」
助手席に座る、恵口家のおばさんが、後ろを振り返って優しい笑みを浮かべる。
「何でも遠慮せず、自分の家だと思っていいからね」
運転をしているおじさんも、バックミラーで私と目が合うと、眼鏡の奥の瞳を細める。
とうとう今日から私は、葉山から恵口へと、苗字が変わる。