「一緒に虹を、見てみたい」






「わぁ、凄い」

 隣を歩く恵口は、ハタハタや、ヌマガレイ、ソウハチなどがユラユラ泳ぐ水槽を、物珍し気に見ている。

「恵口は水族館に来たの、いつぶり?」

「前は……いつだろう。覚えていないくらい昔。この水族館には初めて来たよ」

「この街には転校してきたって、言ってたね」

「うん」

 話を広げようとはせずに、恵口は先を歩いてゆく。

 以前も転校について聞こうとしたら口籠られ、突っ込まれたくないのか。

「うわ、この蟹美味そう」

「ちょっと塩見、何バカなこと言ってるの」

「あー、蟹見てたら、腹減ってきた」

 一方で、ググゥ……見物客の真ん中でお腹の音を鳴らした塩見の足を、石黒が踏み潰す。

「ほら、蟹はもういいから、あっちに行くよ」

 恵口を狙っている、と言う割には、いつも塩見は石黒と一緒にいて、楽しそう。

 石黒はサバサバしていて心中は読めないが、塩見に対して、友達以上の気持ちはあるのか、ないのか。






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