「一緒に虹を、見てみたい」
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週の半分、残り数日学校に行くと週末に入り、土曜日になると、私はおばさんと買い出しに行って料理を作っていた。
あと三十分で午後六時、一応私の家で夜ご飯を食べて、その後ガレージで手持ち花火をすることになっている。
「希花ちゃん、そろそろハンバーグ、焼いてくれないかしら」
トレーに乗ったハンバーグのタネを、熱したフライパンの上に乗せる。
瞬間、ジュ―ッ、と食欲をそそる音を立てる。
「今日は嶋原君も来るのよね? 会うの久しぶりだわ」
「あっ、でも……」
記憶の事情を知らないおばさんに、自分なりの言葉で説明すると、おばさんは目を点にして、剥きかけのジャガイモを持ったまま固まった。
「……そんな事情があったなんて、初めて知った」
「私も、最初はビックリだったんですけれど」
「じゃあ、うちに来た記憶ももうなっていこと?」
「そうですね」
あの日、うちに上がって一緒にロールケーキを食べた嶋原君は、もういない。
「記憶が消えるって、言葉で表せないくらい、辛いですよね……」