学校一のイケメンと噂の先輩は、優しい吸血鬼でした
「先輩!?大丈夫ですか!?」
「ごめん秦野ちゃん。大丈夫…。」
と言っている割には立ち上がれないようで、床に座り込む。
「……血が必要なんですか?」
「まぁ…。」
「あの、私ので良ければ怪我を治してくれたお礼に少しくらい…。」
「ダメだよ〜、そんな簡単にそういうこと言ったら。
俺放っていっていいから、もう授業戻りな。」
「いやさすがにそれは!」
「いいからいいから。」
どう考えてもよくない状況なのに、まだこっちを気遣ってくれる先輩。
少しは自分の心配したらいいのに。
「血を吸われたら吸血鬼になるとかあります?」
「ふふ、なにそれ。ないよ〜。」
あ、確かにそんなことがあるならさっきので既になってるか。
あれを吸ったと言うのかはわからないけど。
私は立ち上がって辺りを見渡すと、後先考えず近くにあったハサミで腕を切った。
そして先輩の顔の前に腕を近づける。
「え、ちょっと何してるの?せっかく怪我治ったのに。痛いでしょ、大丈夫?」
「大丈夫じゃないので治してください。」
「……全くもう〜。」
先輩は腕に唇をつけると、先程のように血を舐めた。
それも2、3回で傷がふさがってしまう。
でもこんなんじゃきっと足りないよね…。
先輩はまた同じことをしようとした私の腕を掴んだ。
「ダメだよ。傷つけちゃダメ。」
「先輩が治してくれるからいいんです。」
「でも痛いでしょ?
ありがとう、もう十分だよ。少し動けるしまたベッドで大人しくしてる。」
先輩はまたベッドの上に戻っていく。
「私のことも、あの時の女の人みたいに吸血するチャンスはあったのに、なんでしなかったんですか?」
「ちゃんと同意を得て吸血してるんだ。」
「じゃあ私もいいですよ?死んだりとか、吸血鬼になったりとか、ないんでしょう?」
あの時あの部屋にいた女の人も、この間先輩と話してるのを見たし。
「そりゃそんなことないけど、やだ。
吸血したら、された相手は俺と関わった記憶消えちゃうんだもん。あ、今は牙立ててないし大丈夫だよ。
俺は秦野ちゃんともっと仲良くなりたいし、俺のこと忘れられたら困る。」
「でも先輩死んじゃったら……。」
「大丈夫だよ。
授業終わったら来てくれるって子がいたから。」
「ほんとですか?」
「ほんとほんと。
だから秦野ちゃんは授業戻って。」
「……はい。」