飲んで、のまれて 愛されて
「なーなー、蘭!LINE 教えてー」


俺がトイレから出てくるや否や
俺に抱きつきながら上目遣いでお願いしてくる



…可愛ないぞ?


俺が好きなのは目がちょっとつってて、サバサバした性格で貧乳のギャルが好きやねん!!!


見た目的に言うたらあのカウンターの…って
あれ?さっきの子どこいった??


俺は店内をキョロキョロと見渡した



あ、純とダーツしてるわ
ほんでそこそこ上手いやんあの子


171cmの純より20cmちょい
ちいさな女のコが真剣な眼差しで1本1本に神経を研ぎ澄ませているのがわかる



真剣な顔の中にこの子の強い感情が見て取れる


きっとこの子は周りに恵まれて幸せな人生を送ってきた
そしてきっとこれからも


感情を表に出すのが得意で愛嬌がある



俺とは真逆の人間



触れると壊れてしまう繊細な生き物


闇の中で生きてきた俺はこの子の光に近づくと消えてなくなってしまうだろう




眺めるくらいがちょうどいい



「蘭~!構ってくれへんねんやったら帰んで~!!一緒に帰ろ???」



なんか言ってるわ
腹の足しにもならん女



俺は欲求不満やないぞ
心の声がふと漏れる


「…帰れよ。1人で」



俺の本心は店内に響くカラオケの音と人々の談笑にかき消された



「次きた時は一緒に帰ろな!」


お得意の作りなれた笑顔を振りまき
客を帰らせた

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