飲んで、のまれて 愛されて
下を向いた純くんは私の方をゆっくりと向き
優しく問いかけた


「朱羽は蘭のことどう思う?」


不意の呼び捨てに純くんの真剣さが伝わってきてゴクリと唾を飲み込む


「どう思うって…」


私は純くんの目を直視出来なかった

後ろで背中を向けている蘭くんを数秒見つめた
そして純くんを見返して答えた



「蘭くん…いや、嵐くんは…なんか重いものにずっと縛られている気がするんです。会って1回、2回目の私なんかが何言ってんのって思われるかもしれないですけど…。なんで嵐くんは優しくないフリをしてるんですか???」



「朱羽ちゃん、なんで嵐って…?」


私は知っていた
蘭くんの名前がきっと本当では無いこと
お店で源氏名として蘭という名前を使ってたこと
決定打は銭湯の前で純くんが嵐と呼んだことだったけど

何となく蘭という名前が本名では無いことは反応でわかっていた

それに冷静になれば 嵐という字は らんとも読む
それを考えると嵐が本名であることが何となくわかる



「朱羽ちゃんは嵐がなんで本名使ってないか分かる???」


純くんが私に問いかけてきた


「純くんは知ってるんですか??」


質問を質問で返す



「いや、きっと俺はホントの理由は知らない」


純くんは再び嵐くんの方を向いた


「私何となくわかる気がします…」
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