飲んで、のまれて 愛されて
「いらっしゃいませー!って、おお!朱羽!」


相変わらず蓮くんは笑顔で出迎えてくれた
今日は土曜日お店もかなり盛り上がっていて

カウンターの中には蓮くん以外のスタッフもいた


「忙しそうですね、2人行けますか?後でひとり来ます」


ちらりと店を見渡したがボックスは満席
カウンターだけがチラホラ空いていた


「カウンターでもいい??」



そう言って蓮くんはカウンターに案内してくれた



蓮くんは私のドリンクを作ってくれたあと
他のお客さんのところに行ってしまった


茉莉からは連絡がなかった



1人でこんなところってすごいアウェイ…
BOXは飲みゲーが始まりかなり盛り上がっている
蓮くん以外のスタッフはみんな初めましてだったし少し1人で携帯をいじっていた。



「なに飲んでんの??」


カウンターに居たお兄さんが私に話しかけてきた。
なんとなくブランドの香水の匂いがする八重歯が特徴のお兄さんだった。


うわ、ちょっと顔タイプかも…


これが最初の感想だった


彼は藤上 純(ふじがみ じゅん)と名乗った


純くんは自分が28歳のサラリーマンだと教えてくれた
お昼の仕事もしつつ忙しい日だけ手伝っているらしい
蓮くんと小学校から仲が良くFlowerのオーナーと同い年らしい



物腰柔らかな話し方で
笑った時に出るエクボと八重歯が純くんの特徴だった


純くんと話していると、ふと2つ隣の席に座っている女性客に目がいった


バーカウンターの中にいるもう1人のスタッフとずっと手を繋いで何かを話している



赤に近い茶髪で首元を隠すようにタートルネックのシャツを着た笑顔が絶えないスタッフさんだった



「純くん、あの二人って付き合ってるんです???」


気になった私は純くんに聞いてみた
純くんは私にグッと顔を近づけて
耳元で小さな声で教えてくれた



「あれはお客さんからずっとホテル誘われてんねん、全く付き合ってないよ」




やっぱりお酒の席ってそういうこと多いんだなあと少し期待した自分がいた。


でも私はお酒が飲めないから酔っ払って大胆になることが出来ない
シラフであんなふうにはさすがに出来ないなと淡い期待は捨てた
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