カフェラテdeプリンのカサブランカ日記
 だからって悪い思い出ばかりではありません。 臨床実習をしていた時も楽しい思い出は有りました。
そうそう、土曜日の午後は洗濯物を思いっきり処分するんです。 洗濯機を回してみんなが帰ってしまった後、ぼくは施術室に籠ります。
静かな静かな部屋で教科書を読んでいたりカルテを整理していたりするんです。
実習とはいえ、本番さながらにカルテを書いて保存しておくんですよ。 たいていの人は症状の経過を【同状】で済ませるらしいですけど。
 施術室にはいつも実習助手の女性が居ました。 愛称はトントン。
太ってるからじゃなくて、名前が登紀子だったから。
んで、彼女とテーブルを挟んで向き合っているんです。 緊張しますねえ。
彼女は数年上の先輩で、もう結婚していました。
そんなトントンと話ながらカルテの整理をしています。 いつもいつも彼女と二人きりでしたからいろんな話をしました。
 思い出すんですけど、彼女は昼休みになるとぼくの所へ来て腰の治療をしてくれって頼むんです。
同級生たちはそのたびに「あなたの患者さんが来ましたよ。 人気者ですねえ。」って冷やかすように笑ってましたっけ。
 んでね、ベッドに横になった彼女を診させていただくわけです。
腰というよりは左の股関節に問題が有った人でした。 治すことは出来なかったけれど、いろんなことを試させてもらいました。
今ならきちんと治せますよ。 30年もいろんな患者さんを診てきましたから。
 それでもね、卒業するまで変わらずに頼りにしてくれたんです。 落ち込みそうな時も有りましたけど、トントンにはいつも支えられました。

 洗濯が終わると荷物をまとめて寮へ帰ります。 これから昼食です。
なんせ、洗濯が終わるのは2時ごろですからねえ。 それから食堂へ飛び込みます。
ぼくの席には冷えた丼が何個も置いてあります。 「好きなだけ食べていいよ。」っておばさんたちにはいつも言われました。
それで5個6個の丼を空にするわけです。 冷えて伸び切った団子のようなラーメンでも、、、。
だからかな、今でも冷えて伸びたラーメンは嫌いじゃありません。 変わってますねえ。
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