YUZU
堂々としてたらバレないもん
ドリームランドの入場券購入は、自動販売機ではなく窓口だったのだ。未成年コンビが平日に二人で遊園地。柚樹は補導されたらどうしようと気が気じゃなかったのに。
「やっぱマズくね? 補導されるかも」
二の足を踏む柚樹に対し、柚葉は実に堂々としたものだった。
「大人1枚、小学生1枚お願いします」
柚葉は窓口のお姉さんに笑いかけながら、自然な仕草でバッグから財布を取り出していた。
「大人1名様、小学生1名様ですね」
つられた窓口のお姉さんも、普通に入場券を売ってくれたのだった。
改札に入場券を通し、まんまとドリームランドに入り込んだ後「こういうのは堂々としてたらバレないもんなのよ」と柚葉はニヤッと悪そうに笑ったのだった。
確かに柚葉は堂々としていた。
でも柚樹は、バレなかったのは服のせいかもしれないとも思った。女子のコーデはよくわかんないけど、ママの服を着た柚葉はなんというか……ダサいわけじゃないけど、女子高生には見えない感じだから。
ダサいわけじゃない。
でも、なんていうか、公園で幼児を遊ばせている若いお母さんみたいな服装だ。まあ、ママの服だから仕方ないんだろうけど。
「? 何?」
「あ、いや」
(オレだけバッチリ決めてて、なんかハズい)と、改札口で思った。
コースターに縛られている今も思っている。
ジェットコースターはいよいよ頂上へ近づいている。とにかく、怖さを紛らわすために何か考えていないと……いろいろなモノがキラキラと出そうだ。
(そういや、柚葉はお金どうしたんだろう)
チケット代もここまでの電車代も全部柚葉が払ってくれた。
「子供が遠慮しないの」とか言って。自分だって子供のくせに。
出会った時、柚葉は荷物を何も持っていなかったはずだ。高校生って制服のポケットに財布入れてるもんなのかな……
がったん。
ついにコースターが止まる。
(来た!)
柚樹の思考も断絶。一瞬の間があって……ビューンと髪の毛が逆立った。身体が宙に浮く。
「きゃぁ~~~~~~~~~~」
隣で柚葉が叫んでいる。お腹の下がひゅんひゅん寒い。死ぬ。心臓が口から出る~。
シャーーーーーーーーー、ギュルン、シューーーーー
急降下、急上昇、回転。
強い風に頬と唇がブヨブヨになびく。怖すぎて歯を食いしばれない。叫ぶなんてもっての外。
(ぐわ~)
心の中で叫びながら、柚樹は振り落とされまいと、必死で手すりにしがみついていた。
ガクン
お腹にグッと衝撃が走り、ジェットコースターが急停車した。気が付くと、柚樹は乗り場に戻っていた。
「降り口は左側で~す」
(し、死ぬかと思った……)
ガクガクする足で、なんとか柚樹はコースターを下りたのだった。
「あ~、楽しかった~」
前を歩く柚葉はルンルンスキップしている。
(化け物だ)
くるりと化け物柚葉が、心配そうにこちらを振り返る。
「柚樹大丈夫? もしかしてホントは絶叫系苦手だった?」
「は? んなわけねーだろ。もっと怖いと思ってたけど、意外とたいしたことなかったよな。ハハハ」
こんな時まで強がってしまう自分が悲しい。と、柚葉の顔がぱあっと輝いた。
(絶対マズった!!)
「いや、でも」
「やっぱり私と一緒ね! 遺伝かしら」
「遺伝?」
「こっちの話! 良かったー。実は柚樹が苦手だったらやめようって思ってたんだけど、これでガンガン行けるわね」
「え、あ、いや」
「混まないうちに絶叫系制覇しちゃおう!」
「いや、今日平日だしそんな急がなくても」
「ガンガン行こ―」
がしっと、腕を掴まれた柚樹は次の恐怖へと引きずられていったのだった。
「やっぱマズくね? 補導されるかも」
二の足を踏む柚樹に対し、柚葉は実に堂々としたものだった。
「大人1枚、小学生1枚お願いします」
柚葉は窓口のお姉さんに笑いかけながら、自然な仕草でバッグから財布を取り出していた。
「大人1名様、小学生1名様ですね」
つられた窓口のお姉さんも、普通に入場券を売ってくれたのだった。
改札に入場券を通し、まんまとドリームランドに入り込んだ後「こういうのは堂々としてたらバレないもんなのよ」と柚葉はニヤッと悪そうに笑ったのだった。
確かに柚葉は堂々としていた。
でも柚樹は、バレなかったのは服のせいかもしれないとも思った。女子のコーデはよくわかんないけど、ママの服を着た柚葉はなんというか……ダサいわけじゃないけど、女子高生には見えない感じだから。
ダサいわけじゃない。
でも、なんていうか、公園で幼児を遊ばせている若いお母さんみたいな服装だ。まあ、ママの服だから仕方ないんだろうけど。
「? 何?」
「あ、いや」
(オレだけバッチリ決めてて、なんかハズい)と、改札口で思った。
コースターに縛られている今も思っている。
ジェットコースターはいよいよ頂上へ近づいている。とにかく、怖さを紛らわすために何か考えていないと……いろいろなモノがキラキラと出そうだ。
(そういや、柚葉はお金どうしたんだろう)
チケット代もここまでの電車代も全部柚葉が払ってくれた。
「子供が遠慮しないの」とか言って。自分だって子供のくせに。
出会った時、柚葉は荷物を何も持っていなかったはずだ。高校生って制服のポケットに財布入れてるもんなのかな……
がったん。
ついにコースターが止まる。
(来た!)
柚樹の思考も断絶。一瞬の間があって……ビューンと髪の毛が逆立った。身体が宙に浮く。
「きゃぁ~~~~~~~~~~」
隣で柚葉が叫んでいる。お腹の下がひゅんひゅん寒い。死ぬ。心臓が口から出る~。
シャーーーーーーーーー、ギュルン、シューーーーー
急降下、急上昇、回転。
強い風に頬と唇がブヨブヨになびく。怖すぎて歯を食いしばれない。叫ぶなんてもっての外。
(ぐわ~)
心の中で叫びながら、柚樹は振り落とされまいと、必死で手すりにしがみついていた。
ガクン
お腹にグッと衝撃が走り、ジェットコースターが急停車した。気が付くと、柚樹は乗り場に戻っていた。
「降り口は左側で~す」
(し、死ぬかと思った……)
ガクガクする足で、なんとか柚樹はコースターを下りたのだった。
「あ~、楽しかった~」
前を歩く柚葉はルンルンスキップしている。
(化け物だ)
くるりと化け物柚葉が、心配そうにこちらを振り返る。
「柚樹大丈夫? もしかしてホントは絶叫系苦手だった?」
「は? んなわけねーだろ。もっと怖いと思ってたけど、意外とたいしたことなかったよな。ハハハ」
こんな時まで強がってしまう自分が悲しい。と、柚葉の顔がぱあっと輝いた。
(絶対マズった!!)
「いや、でも」
「やっぱり私と一緒ね! 遺伝かしら」
「遺伝?」
「こっちの話! 良かったー。実は柚樹が苦手だったらやめようって思ってたんだけど、これでガンガン行けるわね」
「え、あ、いや」
「混まないうちに絶叫系制覇しちゃおう!」
「いや、今日平日だしそんな急がなくても」
「ガンガン行こ―」
がしっと、腕を掴まれた柚樹は次の恐怖へと引きずられていったのだった。