「十年経っても、消えなかった」





 アイスを食べながらトボトボ進む宝生の背中を写真に撮った瞬間、勘が鋭いのか振り返った宝生は小首を傾げた。

「撮った?」

「撮ってない」

「……食べる?」

「いいの?」

「元々雅君のアイスだし……」

 一口もらうと、冷たいバニラが口溶ける。

「雅君、ついてる」

 食べていいよと言われもう一口食べていると、宝生がハンカチを取り出して、俺の口の端を拭った。



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