「十年経っても、消えなかった」




 でも、小さな宝生は精一杯腕を上げている感じで、俺が中腰になると、薄く唇を噛んでいる。

「……チビって、思った?」

「え? いや、別に」

 コンプレックスに思っているのだろうか、俺は可愛いと思うけどな……。

「宝生もついているよ」

 ハンカチをもらうと、今度は自分が拭う。

 睫毛、長いんだな。白い肌が日で赤くなってる。





< 301 / 345 >

この作品をシェア

pagetop