「十年経っても、消えなかった」
眼前に宝生の顔があるが、これ以上近付き過ぎてもまた引かれるか……と思い、離れようとする。
しかし、何を思ったのか、追いかけてくるように顔を近付けてきた宝生の唇が、一瞬俺の口の端に触れた。
──。
「……」
一瞬、二人とも固まったが、一瞬を過ぎた時にバッと離れたのは宝生の方だった。
「えっ、いやっ……」
「……あ」
「ごめんなさい、そういう、つもりじゃ……」
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