「十年経っても、消えなかった」





 しかし、後を追うように宝生の腕を掴むと、今度は自分がキスをする。

 誰もいない、ひまわり畑の小道で、小さな宝生に合わせて中腰になる。

 触れたり、離したり、不器用にキスをして顔を離すと、宝生は俯く。

「宝生、どういうつもり」

「……それは」

「言うまで、離さないから」

 沈黙になっても逃がさず宝生の両肩を握っていると、視線を外したままポツリ呟かれた。




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