ずっと、そばにいるよ2
〜集中治療室にて〜
まだ華は眠っていた。

酸素投与していても、SpO295〜96%前後で、まだまだ酸素は外せない。

熱も39度から下がらない。

航也は、もう勤務時間が過ぎ帰れるのだが、華も美優も不安定な状態のため、仮眠室に泊まることにした。

「今日は泊まるから、目が覚めたら連絡よろしく」

「わかりました」

集中治療室の看護師にお願いをして、美優の病室に向かう。



〜美優〜
時刻は18時前。そろそろ夕飯が運ばれてくる時間。

呼吸器内科病棟に入ると、廊下からナースステーションの中を覗くパジャマ姿の女の子を見つける。

(ん?美優…か?)

ナースステーション内には誰もおらず、夜勤の看護師は業務で出払っているのだろう。

「美優?なに覗いてるの?不審者かよ(笑)」

「あっ、航也。華…入院したって聞いたから心配で…」

「聞いたの?」

「うん、看護師さんから…華は?大丈夫なの?」

「うん、美優にもちゃんと話そうと思ってたから、病室で待ってて?夕飯食ったか?」

「まだ…華が心配で…ご飯どころじゃないよ」

「ハハ、お前がご飯食べないことの理由にはならないだろ(笑)」

航也は美優の頭に手をおいて、目線を合わせて答える。

「俺、患者さんのカルテ確認してから美優の部屋に行くから、それまで夕飯食べて待ってな」

渋々病室に戻っていく美優の後ろ姿を見つめる。


(アイツまた痩せたな…栄養剤考えないとな…)


病棟患者のカルテを確認していく。

最後に、美優のカルテに目を通す。

(ん?下痢?あいつ下痢してんのか…)

ナースステーションに戻ってきた看護師に尋ねる。

「忙しい時ごめんね。美優って下痢してるの?」

「すみません、報告がまだでした。夕方トイレからなかなか出て来なかったので、聞いたら下痢だったと言っていました。腹痛はないみたいです」

「そっか、ありがと。昼食は3割か…やっぱり食えてないな…」

病室に向うと、一応夕飯を食べている美優。しかし、全然減ってない。

「美優?食欲また落ちてるな。どれ、お腹は痛くない?」

前の食欲不振は薬の影響だったが、今はそれはないはず。

「う〜ん、わかんない」

「ご飯中悪いけど、うんちは?今日出た?」

航也は看護師から聞いたとはあえて言わない。

「うーん…」

「美優?ちゃんと俺に教えて?」

「…緩かった…」

「どんなくらい?少し柔らかめくらい?」

「うぅん、水みたいな…少し赤黒かった…」

「ん?赤黒かった?」

「でも、すぐ流しちゃったからわかんない…見間違いかも」

(おい、おい…次から次へと、心配なキーワード出してきてくれるな…)

「美優、よくお話聞いて?今度うんち出たら、流さないでナースコール押して。いい?」

美優は頷く。

「さてと、診察しちゃおう。夕飯は食べれる所まででいいよ。無理すると吐くからな」

熱は微熱まで下がってきていて、呼吸状態も落ち着いている。

食欲低下と赤黒い下痢が気がかり…。美優の気のせいであってもらいたい。

「ねぇ、航也?」

美優が話し出す。

「ん?」

「今日は病院に泊まるの?」

「うん、そのつもり。華もまだ心配だからな」

「そっか。華早く元気になるといいな…」

「なんかあった?」

「うぅん、私のことも、華のことも、他の患者さんのことも…航也大変だなって…私のことより、華とか他の患者さんのこと診てあげてね」

「急にどうした?俺は大変だなんて思ってないよ。みんな俺の大事な患者さんだから、患者さんのために何が出来るか、どうしたら楽になるか考えるのは俺の仕事だからね。美優が変な遠慮して本当のこと言わない方が大変だな(笑)」

「そっか…」

(美優のことだから、俺を気にして言いたいこと我慢して、遠慮してなきゃいいけど…)

しばらく美優の部屋で過ごしているとピッチが鳴った。

集中治療室からで、華の意識が戻ったという連絡だった。

「美優、華が目覚ましたみたいだから行ってくるね。また来るけど、消灯になったらちゃんと寝ろよ?」

「わかった。行ってらっしゃい」
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