恐怖のギロチン回避！ 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

2話

　胸がムカムカして吐きそうで、叫びたい情動を抑え。

　カサンドラはあがった息を整えていた、そんな彼女の耳に『ギィイイッ――』と、慣れない金属音が聞こえ、夜空を見上げた。

　そのカサンドラの瞳に飛び込んだのは、先ほど前あった満天の星空ではなく。王都、夕暮れと錆びた断頭台……さっきと違うのは側から見ているのではなく。カサンドラ自身が煤けた服を身に付け、手枷と足枷を付けていた。

　――なんなの？
　
『足を止めるな、さっさと行け！』
　
　手に斧を持った騎士と、鎧の騎士に背中を押されて、カサンドラは訳がわからないまま足を進め。王都の広場、大聖女マリアンヌの銅像が見下ろす前に設置された、ギロチン――断頭台絵の前まで連れて来られた。
　その側、断頭台を見下ろすように造られた高台から、睨むように見つめるアサルト皇太子と妹のシャリィが見ていた。

　カサンドラほ断頭台に頭を入れられ、身動きが取れない。設置が終わり、1人の騎士が胸手を当て凛とした声を上げる。

『ただいまより、罪人カサンドラの刑執行を行います！』

　騎士の声と皇太子アサルトが刑執行の合図、手を上げた瞬間、カサンドラは扇越しに妹の醜い笑顔を見た。

（シャリィ⁉︎ ）

　してやられた……カサンドラの心が妹への憎しみに染める。だが、カサンドラは嫉妬で妹をいじめてしまっていた、それは紛れもない事実なのだ。そしてなにより、妹の方がカサンドラよりも一枚上手であった。
　
　クソ、クソ、クソ、死を目の前にしたカサンドラは醜い言葉を吐き、マリアンヌ様に願った。

（大聖女マリアンヌ様お願いします、もう一度、やり直せるのなら……こんな事にはならない）

　と、願いを伝えた直後。

　速度を上げギロチンの刃（やいば）はカサンドラの首めがけ……
　

「（ヒィイイッ――！！）」

　
　言葉では言い表せない恐怖……
　ゴロリと、自分の首が地面に転がる。


「（私の、首、首……私の首ぃいいぃ――！！）」


（……あ、あれ？　ある……くっ付いてるわ？）

　
　カサンドラは自分の首を両手でしきりに触り、自分の首が繋がっている事にホッと胸を撫で下ろし。あがった息を整え。周りと、恐る恐る見上げたカサンドラの瞳に映ったのは……満面な夜空の星々。

　ここは、紛れもなく王城の庭園。

（い、今のはなんだったの？　私に、何が起きたの？）

　ドレスの中で足はガタガタ震え、立って入れなくて地面に膝を突き、カサンドラは震える手で己の体を抱きしめた。