恐怖のギロチン回避！ 皇太子との婚約は妹に譲ります〜
23話
カサンドラ達はお祖母様の後に着いて、奥の食堂に向かった。所々ロウソクの灯りではない光が灯る廊下を歩き、いつも使用する食卓の上にはロウソクが並び、分厚いお肉などの豪華な食事が用意されていた。
「お祖母様、すごい料理ですわ」
「ドラお嬢様、すっごく美味しそうです」
「あぁ美味そうだ」
カーシン国からの帰り道。ミルンのパン屋で買ったパンをたらふく食べたはずのカサンドラ達だけど、テーブルに並ぶ豪華な食事に喉を鳴らした。
（で、でも私達が食堂に入ってすぐ……黒い影の様なものがサッと食堂から消えたような気がしたけど、気のせいかしら？）
食堂を見渡し、怖がる素振り見せるカサンドラにお祖母様はフフッと鼻を鳴らし――孫は怖がりだね。とその姿を見守った。
「さぁ遠慮せず食べなさい。そうだ、話の前にカサンドラに渡すものがあったんだ」
お祖母様がポンと食卓のテーブルを叩くと、カサンドラの目の前に真っ白な箱が現れた。
「まぁ、これは……王族だけが使用できる手紙箱だわ」
カサンドラが手にした手紙箱とは、贈り主と受取人が魔力を込めないと開けられない魔導具。
ここ、デュオン国の国民は魔力を持って生まれる者が多い。そのため五歳になったら大聖堂に集められ、一人一人水晶玉を触り魔力を測定される。
大聖堂で測定された魔力は、国の魔術省に登録される。一人一人の魔力には個々差があり、悪いことをしてもわかり、国民は就職に役立つとされる。
カサンドラ達貴族の中では格差が生まれる、原因にもなっていた。
（私は確か青色で、シャリィの色は知らないけど……他よりも魔力量が多かったはず）
差出人は誰だとカサンドラが手紙箱に触れると、箱が光り相手を教えてくれた。この封筒の差出人はアサルト皇太子殿下だ。
（婚約破棄した、私になんのようなの？ 妹との婚約が決まったのかしら？）
手紙箱に魔力を流して開けると。箱の中には皇太子殿下の封蝋が押された、真っ白な封筒が入っていた。
カサンドラが箱から、封筒を取り出そうとしたとき。
「カサンドラ、その封筒に触るのは、やめな」
「ドラ、それに触るな！」
「え？」
突然、声を上げたお祖母様。
隣にいたアオはカサンドラの手を掴んで、中の手紙を触らせないようにした。
「アオ君？ お祖母様もどうなさったの？」
「この甘い香りは……ドルドル草の匂いだ」
「お、若いのによく知っているね。カサンドラ、聞くんだ……ドルドル草は毒草だ」
「ど、毒草？」
「ドラお嬢様⁉︎」
「二人とも安心しな――ドルトル草の毒は、それほど毒性は強くない。もし触ってしまっても、わたしが持っている薬草石鹸で、しっかり手を洗えばいい」
「ドラ。毒は毒だ、触らない方がいい」
二人がカサンドラにそう言うなか。
カサンドラの鼓動はドクドクと一気に跳ね上がり、体の血の気が引いていった。
あの舞踏会の庭園で垣間見た前世のカサンドラ……大聖女マリアンヌ様に誓い、カサンドラは二人の邪魔をせず、今世では妹に何もしていない。
（それなのにどうして？ ……アサルト皇太子殿下が私を殺そうとするの？ それに、このドルトル草の香りは……）
カサンドラは、この香りを知っていた。
「お祖母様、アオ君、これって本当に毒なの？ この香りは……私の妹のシャリィが気に入って使っている香水の香りですわ……」
アオ君とお祖母様の目が開く。
「カサンドラの妹……シャリィのお気に入りの香水なのかい？ おや、おや――カサンドラは前にもこの毒を盛られていたね。……ふむふむ、カサンドラには毒耐性があるみたいだ。だからか、この毒が変に作用したようだ」
――私に毒耐性？
――毒が変に作用した？
それが本当なら、カサンドラには思い当たることがあった。
「お祖母様、毒が変に作用って……いくら食事を減らしても、運動をしても家族との食事の後――体重が増えて、ふくよかになってしまう事ですか？」
「な、なに？ 食事を減らしても運動してもふくよか？ ……ハハ、そうなのかい。面白い作用だ……このことに関してはもっとよく調べないとわからないが。カサンドラがそうなったのなら、そうもしれないね」
「……⁉︎」
だとすると、シャリィは前から想いを寄せるアサルト皇太子殿下の婚約者だった、カサンドラを殺そうとしていた。
『新しいお茶っぱを手に入れたの、お姉様も一緒に飲みましょう』
『王都で可愛いケーキを見つけての、お姉様も一緒に食べましょう』
『カサンドラお姉様。クッキーを焼いたので、テラスでお茶をしませんか？」
……まだまだある。
それら、すべての食べ物にこの毒が仕込まれていた。
「そう、シャリィは私を殺そうとしたの？ それとも、妹は別の効果を知っていて私に使った⁉︎」
「ドラお嬢様……」
「ドラ……」
前世でカサンドラは……アサルト皇太子殿下をシャリィに奪われた、憎しみに染まった。だけど、今世は断頭台の回避もあった……だけど、カサンドラは妹を恨んでいない。
――断頭台で最後に見た、扇越しの妹の歪んだ笑み。
「わ、私はいつも……妹に嫌われるのね……」
それは悲しく、カサンドラの瞳を涙で濡らした。眉をひそめて静かに涙を流すカサンドラを、シュシュとアオは近寄り抱きしめた。
「ドラお嬢様にはズーッと私がいます」
「オ、オレだっている」
「ありがとう……シュシュ、アオ君」
お祖母様はカサンドラが泣き止むのを、静かに見守り待ってくれた。そして、泣き止んだのをみて話を再開させる。
「カサンドラ、毒は全て取り除いたから手紙が読めるよ。手紙に触るのが嫌だったら……わたしが読もうかい？」
「いいえお祖母様、自分で読みますわ」
封筒を箱から取り出して封蝋を切り、中の手紙をカサンドラは取り出した。手紙の内容は――三ヶ月後に王城の広間で開催される。アサルト皇太子殿下と公爵令嬢シャリィ嬢の婚約を祝う舞踏会への招待と招待状。
妹――シャリィからの手紙だった。
「お祖母様、すごい料理ですわ」
「ドラお嬢様、すっごく美味しそうです」
「あぁ美味そうだ」
カーシン国からの帰り道。ミルンのパン屋で買ったパンをたらふく食べたはずのカサンドラ達だけど、テーブルに並ぶ豪華な食事に喉を鳴らした。
（で、でも私達が食堂に入ってすぐ……黒い影の様なものがサッと食堂から消えたような気がしたけど、気のせいかしら？）
食堂を見渡し、怖がる素振り見せるカサンドラにお祖母様はフフッと鼻を鳴らし――孫は怖がりだね。とその姿を見守った。
「さぁ遠慮せず食べなさい。そうだ、話の前にカサンドラに渡すものがあったんだ」
お祖母様がポンと食卓のテーブルを叩くと、カサンドラの目の前に真っ白な箱が現れた。
「まぁ、これは……王族だけが使用できる手紙箱だわ」
カサンドラが手にした手紙箱とは、贈り主と受取人が魔力を込めないと開けられない魔導具。
ここ、デュオン国の国民は魔力を持って生まれる者が多い。そのため五歳になったら大聖堂に集められ、一人一人水晶玉を触り魔力を測定される。
大聖堂で測定された魔力は、国の魔術省に登録される。一人一人の魔力には個々差があり、悪いことをしてもわかり、国民は就職に役立つとされる。
カサンドラ達貴族の中では格差が生まれる、原因にもなっていた。
（私は確か青色で、シャリィの色は知らないけど……他よりも魔力量が多かったはず）
差出人は誰だとカサンドラが手紙箱に触れると、箱が光り相手を教えてくれた。この封筒の差出人はアサルト皇太子殿下だ。
（婚約破棄した、私になんのようなの？ 妹との婚約が決まったのかしら？）
手紙箱に魔力を流して開けると。箱の中には皇太子殿下の封蝋が押された、真っ白な封筒が入っていた。
カサンドラが箱から、封筒を取り出そうとしたとき。
「カサンドラ、その封筒に触るのは、やめな」
「ドラ、それに触るな！」
「え？」
突然、声を上げたお祖母様。
隣にいたアオはカサンドラの手を掴んで、中の手紙を触らせないようにした。
「アオ君？ お祖母様もどうなさったの？」
「この甘い香りは……ドルドル草の匂いだ」
「お、若いのによく知っているね。カサンドラ、聞くんだ……ドルドル草は毒草だ」
「ど、毒草？」
「ドラお嬢様⁉︎」
「二人とも安心しな――ドルトル草の毒は、それほど毒性は強くない。もし触ってしまっても、わたしが持っている薬草石鹸で、しっかり手を洗えばいい」
「ドラ。毒は毒だ、触らない方がいい」
二人がカサンドラにそう言うなか。
カサンドラの鼓動はドクドクと一気に跳ね上がり、体の血の気が引いていった。
あの舞踏会の庭園で垣間見た前世のカサンドラ……大聖女マリアンヌ様に誓い、カサンドラは二人の邪魔をせず、今世では妹に何もしていない。
（それなのにどうして？ ……アサルト皇太子殿下が私を殺そうとするの？ それに、このドルトル草の香りは……）
カサンドラは、この香りを知っていた。
「お祖母様、アオ君、これって本当に毒なの？ この香りは……私の妹のシャリィが気に入って使っている香水の香りですわ……」
アオ君とお祖母様の目が開く。
「カサンドラの妹……シャリィのお気に入りの香水なのかい？ おや、おや――カサンドラは前にもこの毒を盛られていたね。……ふむふむ、カサンドラには毒耐性があるみたいだ。だからか、この毒が変に作用したようだ」
――私に毒耐性？
――毒が変に作用した？
それが本当なら、カサンドラには思い当たることがあった。
「お祖母様、毒が変に作用って……いくら食事を減らしても、運動をしても家族との食事の後――体重が増えて、ふくよかになってしまう事ですか？」
「な、なに？ 食事を減らしても運動してもふくよか？ ……ハハ、そうなのかい。面白い作用だ……このことに関してはもっとよく調べないとわからないが。カサンドラがそうなったのなら、そうもしれないね」
「……⁉︎」
だとすると、シャリィは前から想いを寄せるアサルト皇太子殿下の婚約者だった、カサンドラを殺そうとしていた。
『新しいお茶っぱを手に入れたの、お姉様も一緒に飲みましょう』
『王都で可愛いケーキを見つけての、お姉様も一緒に食べましょう』
『カサンドラお姉様。クッキーを焼いたので、テラスでお茶をしませんか？」
……まだまだある。
それら、すべての食べ物にこの毒が仕込まれていた。
「そう、シャリィは私を殺そうとしたの？ それとも、妹は別の効果を知っていて私に使った⁉︎」
「ドラお嬢様……」
「ドラ……」
前世でカサンドラは……アサルト皇太子殿下をシャリィに奪われた、憎しみに染まった。だけど、今世は断頭台の回避もあった……だけど、カサンドラは妹を恨んでいない。
――断頭台で最後に見た、扇越しの妹の歪んだ笑み。
「わ、私はいつも……妹に嫌われるのね……」
それは悲しく、カサンドラの瞳を涙で濡らした。眉をひそめて静かに涙を流すカサンドラを、シュシュとアオは近寄り抱きしめた。
「ドラお嬢様にはズーッと私がいます」
「オ、オレだっている」
「ありがとう……シュシュ、アオ君」
お祖母様はカサンドラが泣き止むのを、静かに見守り待ってくれた。そして、泣き止んだのをみて話を再開させる。
「カサンドラ、毒は全て取り除いたから手紙が読めるよ。手紙に触るのが嫌だったら……わたしが読もうかい？」
「いいえお祖母様、自分で読みますわ」
封筒を箱から取り出して封蝋を切り、中の手紙をカサンドラは取り出した。手紙の内容は――三ヶ月後に王城の広間で開催される。アサルト皇太子殿下と公爵令嬢シャリィ嬢の婚約を祝う舞踏会への招待と招待状。
妹――シャリィからの手紙だった。
