恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

32話

 お祖母様の言葉にカサンドラは首を傾げる。どうやら、アオのところに深夜行ってはならない事がわからないようだ。隣のシュシュも首を傾げている。

「お祖母様、アオは家族なのに行ってはなぜダメなのですか?」

 その言葉にアオ、お祖母様は驚いた様子。カサンドラは王妃教育の中で閨について習っているはずで。恋物語を何冊も読んでいるカサンドラとシュシュだが、二人は男女の関係に疎過ぎる。

 政略結婚が当たり前な貴族だからだ。幼い頃から婚約者がいて、恋をせず、その人と結ばれる。本の中の恋物語は別世界の話だと思っているのか。

「カサンドラ、シュシュ、お前達年頃だろう? 恋とかの話はしないのかい?」

「恋の話ですか? 私は子供の頃からずっと王城へ王妃教育に通っていたので、時間がありませんでしたわ。好きだったアサルト皇太子殿下は妹が好きでしたし。ようやく時間ができたのは……王妃教育をやめた数ヶ月と今です」

「私も、メイドの仕事とドラお嬢様の為にとドレスの刺繍、寸法の直しと、毎日、ドラお嬢様の為に働いておりました。私も時間ができたのは今です」

 カサンドラは子供の頃から、婚約者のアサルト皇太子殿下しか見てこず、シュシュはメイドの仕事をしていた。
 公爵令嬢のカサンドラとメイドのシュシュは日々、王妃教育とメイドの仕事で、今までまったりした日々を送ったことがなかった。

 だから二人には毎日が新しく、新鮮なのだ。

(わたしは恋愛結婚だから……王妃教育のことは詳しく知らない。メイドの仕事は側からしか見たことがないが……朝から晩まで働いている)

「タヌっころ、ちゃんと教えないと今夜も来るかもな」
「え、魔女様、頼みます。ドラとシュシュに教えてください」

「お前さえしっかりしていれば。一緒に寝るぐらいなら、いいんじゃないかい?」
 
「一緒に寝るぐらいって……」

 アオの顔が何かを思い出して真っ赤になる。その理由はカサンドラの寝巻きだ……本人は気になっていたいみたいだが、いつもは結んでいる黒髪が下ろされ月光にキラキラ光り、潤んだ瞳と、あの寝巻き姿はさすがにマズイ。

 あの夜の見た目は、他の男なら喜んで襲うだろう。

「……ハァ」

「そうかい。一度、カサンドラとシュシュには……わたしの知っている範囲で教えたほうがいいね。でも、カサンドラは最近、夜眠れていないみたいだね」

「え?」

(お祖母様は気付いてらしたの? ……嘘は付けないわ)

「え、えぇ……最近、夢見が悪くてよく眠れません。だから、一緒に寝てもらおうと思ったのですわ」

 カサンドラの言葉にアオはハッと気付く。
 三ヶ月後にある舞踏会が、カサンドラの眠りを妨げていると。
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