恐怖のギロチン回避！ 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

4話

　カサンドラは自分が巻き戻ったと知った。
　そしてもう一つ。
　今から半年後に開催される、アサルト殿下の誕生を祝う舞踏会で、カサンドラは婚約破棄を告げられる事も。

（舞踏会が来る前に、できる事をやらないと）

　カサンドラは翌日から体調不良を理由に、王妃教育に行かず、冷たい家族とも殆ど顔を合わさなかった。
　
　どうにか今より痩せて、アサルト殿下との婚約破棄の後……軽やかに逃げるために食事制限と、運動をしようと考えたのだった。

（食事の量を減らしても……私って、なぜか痩せにくいのよね）

　幸い、両親は妹にしか興味がない。
　カサンドラのやることにも興味もない。だから、メイド姿で洗濯、草むしり、屋敷を守る騎士に剣を習っても気にしない。

　彼らは妹中心に回っている。

『シャリィ、新しいドレスと宝飾品だ』
『シャリィ、カサンドラの代わりに貴女が王城へ登城しなさい』

『はーい、お母様』

　と、この様に。

（同じ娘なのに……どうして、あの人達は私に興味がないのかしらね？　物心がついた時から、そうだった気がする）
　
　一番衝撃だったのは……十歳。
　皇太子の婚約は真っ黒な髪、赤い瞳、太めのカサンドラよりも。フワフワなピンクゴールドの髪、水色の瞳の可愛いシャリィが婚約者に選ばれと思っていた。
　
　しかし、年功序列だと国王陛下は姉のカサンドラを、アサルト殿下の婚約者とした。当然ながら、自分がアサルト殿下の婚約者に選ばれると、思っていた妹はショックを受けた。王城から帰ると泣き喚き、部屋の家具を壊して両親に当たり散らした。

『なぜ？　あたしではなくて……デブなお姉様なの？』

　そんな、泣き叫ぶシャリィを慰め、両親は。
　
『シャリィが泣いているわ、カサンドラ謝りなさい』
『カサンドラのせいだ』

　理不尽な事を言い放った。

　こんな事が度々おきた。

　アサルト殿下だってそう、初めは優しくしてくれた。
　だが、王城へ王妃教育に向かうカサンドラの馬車に、妹も連れて行きなさいと、両親は馬車に乗せた。
　
　王城で、カサンドラが王妃教育を受けている最中。
　いつの間にか仲良くなった二人は庭園でお茶、書庫で本を読み、遊ぶようになっていた。

『シャリィ、私はここに遊びに来ているんじゃないわ！』

　文句の一つでも言うと、二人そろって反論する。
　それでも、私はアサルト殿下が好きだった。

（初めて、殿下にお会いしたとき一目惚れをした……だから八年間もの間、大変な王妃教育も受けられた）

　それも明日で終わりを迎える。

　昨夜キッチンに向かう途中、食堂で夕食をとる両親と妹の会話を聞いた。

　妹は声高々に。

「明日の舞踏会でお姉様が婚約破棄されて、あたしがアサルト様の婚約者になるの」

「まぁシャリィ、よかったわね」
「アサルト殿下と幸せになるんだよ」

　もう婚約者になったかの様に、喜ぶ両親がいた。

　大丈夫、今世の私は妹に何もしていない。
　ギロチンだって回避出来る。


　
　
　今宵、皇太子の誕生を祝う舞踏会が王城で開催された。前のカサンドラはこの舞踏会で、アサルト殿下に婚約の破棄を告げられ、自ら犯した罪の数々をシャリィによって告げられる。

　そして、カサンドラは騎士に捕まり牢屋に入れられ、数ヶ月後にギロチンで死ぬ事になるけど……今回は妹をいじめていない。


　さぁ行くわよ。


　いつものようにエスコートもなく、一人で舞踏会の会場に入場したカサンドラを見た、貴族達がざわつき始める。

（妹が流した噂で、注目はかなり浴びるとは思っていたけど……そんなに穴が開くほど見なくていいのに。着ているドレスは新調していないけど、メイドのシュシュが刺繍をしてくれて、素敵になったわ……何処もおかしくないはず）

　あまりの注目に、カサンドラは顔には出さないものの、心の中でかなり焦っていた。