恐怖のギロチン回避！ 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

47話

　ふうっと、ため息が出る。内容はどうせ舞踏会のドレスのことについて、書いてあるのだろう。それより、シャリィが使用する毒のことを考えて、カサンドラはすぐに手紙を開けることが、できないでいた。

「お祖母様、ありがとうございます」

「いいや。カサンドラ……毒は解毒したから開けても平気だよ」

「え？　は、はい」

　毒を解毒――カサンドラはやはりそうかと納得した。妹が普通に、カサンドラへと手紙を送ってくるわけがないのだ。

　――その毒で、私をどれだけ太らせたいのかしら。
　
　手紙を開けないまま、アオの家の前に着くと。
　お祖母様はホウキを手にして「面倒だが、ドラゴンのシャルルに会いに行ってくるよ。今晩は多分……別荘には戻らないから」と、言うと。

　ヤカル山に向けて飛んで行った。



「カサンドラ、昨日の冒険の続きに行くか？」

「そうね、しばらくアオ君の家で、休んでから行きましょう」

「わかりました。ドラお嬢様、アオ君、昼食はどうされますか？」

　もう直ぐ、お昼の時間だった。
　
「そうね、昨日の残りもまだあるから軽く取って、冒険の帰りに何か買って来ましょう」

　カサンドラが手に持っていた妹の手紙を開く……内容は、カサンドラが思っていた内容だった。


　その手紙を横からアオが奪い、声を上げて読んだ。


「なになに『お姉様に送った素敵なデザインのドレス、サイズがお姉様にピッタリでしたでしょう？　アサルト様と一緒に王都で有名な衣装店に頼みましたの。そのドレスを着たカサンドラお姉様に、舞踏会で会えることを楽しみにしています。ぜひ、私達の婚約式に来てください』ハハッ、あのデザインのドレスを素敵だと言うかのぁ……まぁ、似合う女性が着ればいいが、美人のドラに似合わないよな」


「はい、似合いません。……ですが、ドラお嬢様お任せしてください。私が今、お嬢様に似合うデザインのドレスに作り替えています」

　シュシュが任せてください。と胸を叩いた。カサンドラはシュシュのプロ級の腕を知っているから、安心して任せられる。

「ありがとう、楽しみにしているわ、シュシュ。そうだ、舞踏会の日、アオとシュシュも一緒に王都へ行きましょう。2人にエスコートもしてほしいのだけど」

　えぇ！！　と。アオの家に2人の驚きの声が上がる。それもそうだろう、王家の舞踏会にメイドのシュシュと、獣人のアオを連れて行くと言ったのだから。

「ドラ、シュシュはメイドとして着いていけるが……オレはただの獣人だ」

「違うわ、アオは私の騎士よ。守って欲しい」

　カサンドラに対して淡い恋心を持つアオ。好きな女性に騎士だと言われて断れるはずがない。舞踏会まで2ヶ月とちょっとあるから、騎士らしく体を鍛えようとアオは決めた。

「わかったよ、ドラを守る騎士になってやる。……さて、冒険をサクッと終わらせて別荘に帰るかぁ！」

「えぇ、サクッとは終わる気がしないのだけど、頑張るわ！」

「はい、筋肉痛ですが……やります！」

　軽く、昨日買ったパンを食べた後。カサンドラ達は荷馬車でロロの森に向かいアオの手伝いを借りて、残りのスライムを10匹倒した。

　カサンドラが森の珍しい植物に気を取られる前に、ララサの街に戻り。冒険者ギルドで報告を済ませて、スライム1人20匹の報酬をもらった。

　その足でスズさんとチロちゃんのパン屋により、2人に報酬を渡して店中のパンを買い占め、カサンドラ達は別荘へと戻ったのだった。

「チョコパン美味しい！」
「あんこのパン最高です」