恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

52話

 カサンドラはお祖母様と瞳が合い、瞬時に察知した。
 これは気付いても、気付かないふりをしたほうがいいのだと。シャルル様はこちらに背を向けているから、カサンドラ達には気付かない。

「アオ、シュシュ、奥の4人掛けのテーブルにしましょう」
 
「あ、はい、ドラお嬢様」
「ドラ、シュシュ? わかった」

 シュシュとアオもカサンドラの考えに気付き、気付かないふりをした。もし、シャルル様が私達に気付き話しかけたら、挨拶をすればいい。

(だって、お祖母様――シャルル様とデート中ですからね。お2人の邪魔をしてはなりません)

 デート中に話しかけると気分が壊れたと、機嫌を悪くされることがありすし、また失礼にもなるのです。無神経な行いは淑女としてあってはならない。
 妹とシャリィには――アサルト皇太子殿下とのお茶の時間を、幾度も邪魔されたので嫌ほどわかっている。

(セリィーヌお祖母様はただ、恥ずかしいからですわね)
 
 でも、穏やかにお祖母様が微笑んでらっしゃるから、シャルル様との会話を楽しんでいる証拠。あんなに熱烈な告白をされて、嫌な女性はおりません。

 

 カサンドラは席につき、店員にアップパイと生クリーム、ダージリンティーを3セット頼み、ウキウキと待っている。

「なんていうか、魔女様とシャルル様とお似合いだな」
「アオ君もそう思われます、幸せそうで羨ましいですわ」

「はい、羨ましいです。ここはデートをするにもいい穴場なんですよね」

「ええ、そうね。ケーキも美味しいし、静かで落ち着けますわ」

 カサンドラとシュシュは頬を染めて語る。アオは周りをソッと眺めるとお忍びの貴族、若いカップル、熟年の夫婦の姿が見えた。

 みんな幸せそうにケーキを食べ、紅茶、コーヒーを飲み語り合い笑っている。アオもいつかここで、カサンドラと……デートがしてみたい、と思った。

「アオ君、アオ君?」
「なんだ? ドラ」

「焼きたてのアップルパイが届きましたわ、冷める前に食べましょう。シュシュは先に食べ過ぎです」

 シュシュはカサンドラとアオを待てず、アップルパイをパクパク食べ、頬を膨らましている。

「すみましぇん。焼きたての、いい香りに我慢できませんでした。サクサクのアップルパイは美味しいです」

「ほんと、この店のアップルパイ美味しいから、何個でも食べれちゃう」
 
「ドラお嬢様、今日は一つで我慢してください。舞踏会のドレスが着られなくなります!」

「サイズも合わせてことですし、そうなったら困りますわね。アオ君も食べ過ぎないように」

「俺も?」
 
「あたりまえですわ。私が食べられないのに、2人が食べるのはずるいです!」

 可愛いことを言う、カサンドラにシュシュは笑い。アオは鼓動を跳ねさせた。
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