恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

60話

 王都までカサンドラ達を運んでくれた、御者さんには休んでもらい、王都で1日新しい馬車と御者を頼んだ。

 今宵の舞踏会のため、シュシュが仕立て直した舞踏会のドレス。ピンク色で沢山あったリボンは全て取られ、シュシュが施した花の刺繍入っている。

 黒髪のカサンドラに似合うかは別として、どこぞの貴族令嬢が着るドレスより、最高のドレスだと言ってもいいくらいだ。

「ドラお嬢様、綺麗です」
 
「そう? ありがとう。でも素敵なのはシュシュのスルールをモチーフにしてさした、刺繍の腕がいいのですわ」

「ありがとうございます……ドラお嬢様のお褒めの言葉嬉しいです」

 舞踏会に入るとき、シュシュにもドレスを着るかと聞いたが、彼女は首を横に振った。あくまで自分はカサンドラのメイドですと。だから良い生地を使いメイド服を作ってもらった。

「私とお揃いのリボンもいいわ、アオ君にも着けましょう」

「はい、そういたしましょう」

 リボンを解いて作った花の髪飾り、アオの胸にもカサンドラ達と同じものが咲くことになった。

「化粧は軽めでお願いね」
「かしこまりました」

 ドレッサーの前で薄ピンク色のベニをつけて、軽めの化粧も終わるころ。王都広場に建つ時計台の鐘がボーンボーンと鳴り、6時の時刻を告げる。
 舞踏会の時刻が迫る、カサンドラは空腹防止のためのクッキーをひとつ摘んだ。

「物足りない、舞踏会が終わるまでの食事がこれだけなんて……舞踏会への参加はごりごり」

 道中食べ過ぎたカサンドラ、少しドレスがキツくなっていた。

 だからといって、ドレスのサイズは調整したくない。
 この贈られたドレス、手紙などに意地悪を施し。ふくよかになったカサンドラに期待する、妹のシャリィを少しでも驚かせたい。

(妹の驚く顔が見られたら、それでいいわ)

 その為だけに、今宵の舞踏会に来たといってもいい。
 元婚約者のアサルト皇太子殿下のことは、キレイさっぱり、カサンドラは忘れていた。

「ドラお嬢様。シャリィ様に挨拶が終わりしだい、お暇すればよろしいのでは?」

「それがいいわね。アオ君も慣れない大勢の貴族の中で……きっと、疲れてしまうと思う。シュシュ、あなたもだけどね」

 舞踏会では多くの貴族達の注目を、浴びることになる。
 カサンドラは慣れていない2人のこと考え、サッサとお祝いの言葉を告げて、舞踏会から帰ることにした。

(長居しても、決して、いいことはないわ)




 ♱♱♱


 出発の30分前。
 コンコンコンと宿屋の扉が叩かれ「準備が終わった」と、アオはカサンドラが用意したジュストコールを着て現れた。

「まあ、アオ君……ステキ、お似合いですわ」
「はい、とてもお似合いです」

「そ、そうか……どこか、おかしなところがないか見てくれ」

 初めて着る服に緊張気味のアオ、カサンドラとシュシュの瞳が彼をチェックした。

「シュシュ、アオ君の髪を上げた方が更にいいかしら?」
「その方がいいですね。整髪料で整えましょう」

「え、髪? おい⁉︎」

 シュシュが整髪料のクリームを手に取り、アオの髪を整え、カサンドラが彼の、胸ポケットにお揃いの花飾りを飾った。
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