恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

65話

「……っ?」

 シュシュの時も戻る。彼女は動ける様になると、舞踏会の会場内を見回した。そして――この状態に驚かす、どこかワクワクした様子を見せた。

(シュシュったら、この不思議な空間を物語のようだと思っているのね……かくいう私も、内心で少しだけそう思っているけど)

 それすら察知したのか、ウキウキした瞳をカサンドラに向けた。

「ドラお嬢様、凄いです。こんな体験初めてです」

「私だって初めてよ。でも、2度は体験したくないけど」

 いつもの雰囲気と2人の呑気な会話に、気を張っていたアオが声を上げる。
 
「おいおい、お前ら……よく、こんなときに落ち着いていられるな。俺の心臓はバクバクだぞ」

「あら、アオ君は分からないの? 平気に見せているだけよ――1人だったら、この空間が不気味すぎて。そうね……気絶しているわね」

「だよな、不気味だよな」
「はい、ゾワゾワしますね」

 カサンドラ達は別荘で、魔女のお祖母様の魔法訓練を受け。前より魔力が上がり、この異質な魔力の流れを読み……不気味だと感じていた。

 

「カラス! もう、なんでもいいわ! お姉様を私よりも醜くしてよ。それが出来ないのなら、私を世界一の美女にしなさい」
   
「嫌だね。君はカサンドラに会うために、利用させてもらっていただけ。君の美とか僕にとっちゃどうでもいい……ボクは罪深きカサンドラを断頭台から、カッコよく助けるはずが、物語が変わり……新たな計画……ふくよかになったカサンドラを元の姿に戻して……ボクとのハッピーエンドを想像していたのに――立ち回りが上手く行かないなぁ」

「……」

「カサンドラを推す、ボクが助け。カサンドラがボクに恋をする……神様がボクの願いを叶え、ボクをここの住人にしてくれたと思ったのに……ブツブツ」
 

(やっぱり、この人……断頭台だとか、ふくよかだったとか、私のことをよく知っている。そして、なんなの? その独りよがりな思惑は?)
 

 カサンドラ、アオ、シュシュは男性を変だと、危険だと感じた。アオは2人の前に立ち、男から距離を取るように伝える。

「ウウッ……不気味だな。ドラ、シュシュ、少し離れるぞ」
「ドラお嬢様そうです。その変な、ソイツから離れましょう」
「え? えぇ」

 カラスという、花束の男性がまとう黒い霧も、今の3人なら見えている。それはシャリィにも言えた……この男性から貰ったのだろうか。今、腕につけているブレスレットから、黒いモヤの様なものが見えていた。

(あれは前に見た、変な光を放っていたブレスレット?)

「カラスの裏切り者! まったく使えないわね、こうなったら私が!」

 シャリィは胸元から、緑色をしたガラス瓶を取り出すと。大階段から、カサンドラたちにめがけて投げつけた……その勢いで、ガラス瓶の蓋が空で開き、3人が知っている甘い香りを届けた。


「シャリィ、カラス、あんた達、いい加減おし!」


 会場内に響くお祖母様の声と、カランドラに向けて投げ飛ばされた瓶は目の前から消え。次の瞬間、シャリィの額にゴツっと当たり、中の液体を彼女にこぼした。


「きゃあぁぁああ――! なになに⁉︎」

 
 液体を被った、シャリィの体型を徐々に変わっていく。
 

「いや、いやぁ――――!! こ、こんな、ふくよかで、醜い姿……いや、嫌よ!! アサルト様に愛想尽かされてしまうわ!」
 
 
「本来の使い方をせず、私の大切な薬をそのように使った罰さ……まったく、弟子は己の欲の為だけに、子供のシャリィに近付き。カサンドラから両親の愛、婚約者の愛を奪い傷付けたのかい……どこまでも酷い男だね。今から思えば、私との出会いもお前の計算だったのか!」

 お祖母様の、怒りがこもった声が響いた。
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