恐怖のギロチン回避！ 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

シュシュの話

　私は没落して、馬車の事故で12歳のときに両親を失った男爵の娘シュシュ・パーカー。10歳の時に受けた魔力測定で生活魔法とメイドとして、役立つスキルを持っていた。
　
　そのスキルのおかげで、住む場所を失っても私はメイドとして貴族に雇ってもらい働いていた。14歳の時、前のご主人様の推薦でマドレーヌ公爵家に雇ってもらえ、カサンドラお嬢様の専属になった。

　２つ年上の第一王子の婚約者。今までにもついたご令嬢達はかなりのわがままだった。カサンドラお嬢様もわがままだと思っていた。
　カサンドラお嬢様は違った……一言で言ったら真面目。どの、ご令嬢の中でも群を抜く淑女だった。

　そのカサンドラお嬢様はご両親に優しくされていなかった。彼女の両親は妹君のシャリィ様ばかり可愛がっている。

　カサンドラお嬢様は表情には出さなかったけど、寂しがっていた――それは婚約者の王子にもだ。彼女の妹はわがままで王妃教育に向かう、カサンドラお嬢様にも着いて来るようになった。

「シャリィ、大人しくしているのですよ」
「はーい、お姉様」

　カサンドラお嬢様が王妃教育を真面目に受ける、目を盗んで、いつの間にか王子のアサルト様と仲良くなっていた。

　お2人で過ごすところを見たカサンドラお嬢様は、一瞬だけ悲しい表情を見せたが、なにも言わず立ち去った。

　それはカサンドラお嬢様が18歳になるまで続いた。


　夏の訪れを感謝する舞踏会の後――カサンドラお嬢様は変わった。あんなに必死に通っていた王妃教育をやめて、家族と食事を取らなくなった。

「シュシュ、今日は本を読みませんか？」

　私を読書に誘い一緒に本を読んだり、私の仕事を手伝い、騎士の訓練にまで参加していた。体型のことは言わなかったが、ふくよかだったカサンドラお嬢様の姿がスリムに変わった。

　だけど、優しいカサンドラお嬢様は変わらず。

「シュシュのバタークッキーが食べたいわ」
「かしこまりました、厨房を借りて焼いてきます」

「フフ、ありがとう」

　カサンドラお嬢様との時間が増えて、私達は仲良くなったと思う。私の裁縫の腕をかってくださり、ドレスの寸法を合わせ、カサンドラお嬢様似合う刺繍を施した。

「とても素敵です、カサンドラお嬢様」
「フフ、シュシュのおかげよ」

　そのドレスを着て参加された舞踏会で、カサンドラお嬢様は王子のアサルト様に婚約破棄された。

　そして。

「シュシュ、私――国境辺りにある別荘に行くわ」

　と、お1人で決めてしまった。
　カサンドラお嬢様は私にここに残り。
　カサンドラお嬢様がいないのに働けというのですか。

「私もついて行きます！」

　素敵なカサンドラお嬢様を蔑ろにする、屋敷になんていたくなかった。

「一緒に着いてきてくれるの？」

　と、嬉しそうな表情をしたカサンドラお嬢様。

　大好きです、カサンドラお嬢様。
　あなたの側で、あなたの為だけに働きたい。