【短編】Love Love Love……
 




「……それで?
 お前たちは、ウチの教会に、何の用だ?」


 雪は、いつの間にか止んでいた。

 低い雲が垂れ込む暗い空と。

 身を切るような冷たい風を供にして。

 ウルジュワーンが外に出たとたん。

 聖クレアの家を取り囲んだ、30名ほどの襲撃者達は、皆一瞬。

 ぎょっとして、身を引いた。

 ウルジュワーンの風貌に、気を呑まれたのだ。

 そんなことは、構わず。

 片目、片腕の神父は、淡々と言葉を紡ぐ。

「教会の扉は、いつでも、誰にでも開いている。
 腹が減り、飯が欲しいのならば、裏にまわって食え。
 遊びに来たなら、もう帰れ。
 迷惑だ」

 ウルジュワーンは、1人。

 ただ立っているだけなのに。

 ここにいるほとんどすべての人間を圧倒していた。

 銃を構えるのも忘れ。

 このまま。

 回れ右して帰りそうな仲間達に舌打ちして。

 リーダーらしき男が、割って入った。

 襲撃者の中で、一番若く。

 高価な服を着て。

 本物の宝石で作られたピアスや鼻輪をごてごてとつけた。

 襲撃者の中でも、一番イカレているように見えるやつが、ウルジュワーンにせせら笑った。

「誰がこんなところで、臭いメシなんざ食うかよ!
 俺達はこれでも、人さがしに来たんだぜぇ?」

 リーダーは、すぃ、と目を細めた。



< 15 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop