【短編】Love Love Love……
Ⅴ
「………っ!」
壁の向こうから、聞こえる言葉を聞いて。
窓ごしに、ウルジュワーンが殴られる所を見た、マリーは。
緑色の瞳に、あふれ出るほど、溜まった涙をぐぃ、と拭いた。
そして。
食堂の奥から、ホコリをかぶった小銃をつかんで、走る。
「しすたー!
いったら、だめだよ!」
マリーが扉を開ける寸前。
食卓の下で。
スィビャーを抱きしめていたアフダルが、マリーのスカートの裾を引っ張って止めた。
「離して、アフダル!
でないと、でないとウルジュワーンが………!」
殺されてしまう。
聖書を読む、穏やかな声が好きだった。
傷だらけの顔をほころばせて笑う顔が、愛しかった。
ウルジュワーンが、こんなところで、死んでしまっていいわけがなかった。
マリーの必死の声に、アフダルは、頑固に首を振った。
「しすたーは、だめだよ。
みんなを、まもらなくちゃ」
「でも!」
叫ぶマリーに、アフダルは、にこっと笑った。
「……ぼくが、いく」