【短】またいつか、同じ夜空を見られたら
「っ、あ、ねえ北村さん。せっかくだし、花火始まるまで屋台見て回ろうよ!」
かと思えば、今度はわざとらしいぐらいの明るさで、そんな提案をしてくる。
浅見くんの態度は何となく気になるところだけど、わたしの中でそれ以上に屋台の誘惑が勝った。
「うん! わたしりんご飴食べたいな。浅見くんは何食べたい?」
「僕は……」
浅見くんは左上のあたりを少し見上げて、少し考えてから答えた。
「イカ焼きとかかな」
「あは、いいね。イカとか魚とか周作の好物だったけど、浅見くんも好きなんだ」
「そういう北村さんは、前世も今も、果物とか甘い物が好きなんだね」
「うん!」
わたしたちは、目当ての食べ物を買ったりしつつ、たくさんの屋台を見て回った。
くじ引き、射的、ヨーヨー釣り。
かき氷、焼きそば、フランクフルト。
男の子と二人きりでお祭りに来るなんて経験は初めてだったから、少し緊張もしていた。
だけど何より、本当に幸せな時間だった。