【短】またいつか、同じ夜空を見られたら
意味がわからない。いい加減にして。
普通ならそう言い捨ててさっさと教室に戻るような場面なのだと思う。
……だけど、わたしはそうはしなかった。
「本当に、あるの? 記憶が……」
「……え?」
「浅見くん、雪子のことを知ってるの?」
なぜなら、彼が口にした名前を、わたしは確かに知っていたから。
本当によく、知っていたから。
「わたしもあるの、前世の記憶。早乙女雪子の記憶が」
「まじ、で? 北村さんに、雪子さんの記憶が……」
「……ねえ、まさか浅見くん……周作なの? 周作の生まれ変わりなの?」
「えっと、うん。そうなります、ね」
自分から前世の記憶があると話しておきながら、信じられないというように目を白黒させる浅見くん。
それがわたしの顔を見てギョッとした。
「だ、大丈夫? 北村さん……」
「嬉しい……嬉しい……また会えて本当に嬉しいわ、周作!」
とめどなく溢れてくる涙を拭いながら、わたしは最愛の人の生まれ変わりを名乗る彼を、強く強く抱きしめた。