【短】またいつか、同じ夜空を見られたら
『早乙女家ではなく、雪子さん自身の幸せは何ですか?』
前世で周作に何度も繰り返し尋ねられたこと。
それを思い出して、口調が雪子に寄ってしまった。
「良かったです」
浅見くんが歯を見せて笑う。
……周作はこんな笑い方しなかったな。彼はいつも、唇の端を少しだけ持ち上げるような笑い方をしていた。
だけど、その浅見くんの笑顔は眩しくて、不覚にも少しドキドキしてしまう。
「ね、ねえ。それよりもっと、前世の話をしない? まさか雪子のことを誰かに話せる日が来るとは思わなかったから嬉しくて!」
「はい、もちろん」
「えっと、じゃあ周作はさ……」
途中飲み物を買い直したりしつつ、わたしと浅見くんはその後二時間近く、雪子と周作の思い出について語り合った。
話すうちに気が付いたことだけれど、考えるときに左上を仰ぐのは、浅見くんの癖らしい。
周作にそんな癖があっただろうかと思い出してみたけど、たぶん無かった。周作は考え込むとき、腕を組んでどちらかといえば俯いていた気がする。