妹に婚約者を奪われた私は、呪われた忌子王子様の元へ
お茶の時間
ユリウスにお茶を淹れると約束してから三日後の夜。
ティアリーゼは私室にユリウスを招いて、二人で談笑していた。暫くしてからティアリーゼが立ち上がる。
「では、そろそろお茶を淹れてまいりますね」
立ち上がるティアリーゼに、何かを思い付いたユリウスが表情を明るくした。
「そうだ。もしよければ、お茶を運び終えたら僕が用意するドレスに着替えて貰えないかな?」
「え?」
「絶対領域」
「……」
「絶対領域」
「何度も言わないで下さいっ」
「だ、大事なことだと思って……」
「お断りします」
「駄目なのか!?」
仮面を付けていても、彼からの只ならぬ絶望感が伝わってくる。
こんなにも悲壮感を宿す彼を目にするのは初めてであり、それが「絶対領域」によるものになろうとは……。
ティアリーゼは若干引いていた。
「絶対領域」でここまで必死になれるのかと。
このままユリウスを放置しても大丈夫なのか、心許なかっこが「では行ってきますね」と言い残し、ティアリーゼはそそくさと部屋を後にした。縋るような視線を背後に感じながら。
厨房の前にはレイヴンが待っていた。
ティアリーゼは公爵家の敷地内に存在する、別棟の厨房しかしらない。
この城の厨房へ足を踏み入れるのは初めてであり、ポットやカップなどは何処に仕舞われているのか教えて貰う必要があった。
それらの位置や、厨房の使い方を一通りレイヴンから教わりながら、湯を沸かしていく。
手際良く動くティアリーゼに、レイヴンは関心の眼差しを向けていた。
「本当に慣れていらっしゃいますね」
「ありがとうございます。次からは自分一人でも出来ると思います」
「頼もしいですね」
「まだまだお役に立てることは少ないですが、ユリウス様やレイヴン達の負担を少しでも軽減出来るよう、これから頑張りますね」
「ありがとうございます」
レイヴンは僅かに思索すると「ワゴンは私が、お部屋の前までお運び致しましょう」と申し出てくれた。
ワゴンを押しながら室内に入ると、未だ長椅子でうな垂れたままのユリウスが、ティアリーゼの視界に飛び込んできた。
「ユリウス様、お茶をお運び致しました」
声を掛けると、すぐに顔を上げたユリウスが姿勢を正して座り直す。そんな彼を見て、良かった普通に元気そうだと、ティアリーゼは胸を撫で下ろした。
「もう淹れても良い頃合いですね」
ポットカバーを外して、ティーポットに入った紅茶をカップに注いでいく。
「ティアが手ずから注いでくれるなんて」
「そんな大層なことではございませんが」
「僕にとって特別なんだ、凄く嬉しいよ」
大袈裟な表現をされて、反動で所作がぎこちなくなりつつ、ティアリーゼは何とか2人分のお茶を注いだ。
「美味しい」
「薔薇とライチを混ぜた茶葉だと教えて頂きました。ここの紅茶は香りも良いですし、レイヴンの選んだ物に間違いはないですね。昨日の夜に頂いたハーブティーも、とても美味しかったですし。レイヴンはお茶の調合まで得意なんて、尊敬します。
庭で採れた物を中心に、睡眠の質を上げる効果のあるハーブなどが調合されているらしいですね」
「ティアが淹れてくれたから美味しい」
驚いてユリウスの方を見ると、互いに視線が絡み合う。赤紫の瞳が柔らかな色を纏っている。
「負担でなかったら、また僕にお茶を淹れてくれないかな?」
「も、勿論です。わたしなどでよければ」
「ありがとう。とても嬉しくて、幸せだよ」
ティアリーゼは私室にユリウスを招いて、二人で談笑していた。暫くしてからティアリーゼが立ち上がる。
「では、そろそろお茶を淹れてまいりますね」
立ち上がるティアリーゼに、何かを思い付いたユリウスが表情を明るくした。
「そうだ。もしよければ、お茶を運び終えたら僕が用意するドレスに着替えて貰えないかな?」
「え?」
「絶対領域」
「……」
「絶対領域」
「何度も言わないで下さいっ」
「だ、大事なことだと思って……」
「お断りします」
「駄目なのか!?」
仮面を付けていても、彼からの只ならぬ絶望感が伝わってくる。
こんなにも悲壮感を宿す彼を目にするのは初めてであり、それが「絶対領域」によるものになろうとは……。
ティアリーゼは若干引いていた。
「絶対領域」でここまで必死になれるのかと。
このままユリウスを放置しても大丈夫なのか、心許なかっこが「では行ってきますね」と言い残し、ティアリーゼはそそくさと部屋を後にした。縋るような視線を背後に感じながら。
厨房の前にはレイヴンが待っていた。
ティアリーゼは公爵家の敷地内に存在する、別棟の厨房しかしらない。
この城の厨房へ足を踏み入れるのは初めてであり、ポットやカップなどは何処に仕舞われているのか教えて貰う必要があった。
それらの位置や、厨房の使い方を一通りレイヴンから教わりながら、湯を沸かしていく。
手際良く動くティアリーゼに、レイヴンは関心の眼差しを向けていた。
「本当に慣れていらっしゃいますね」
「ありがとうございます。次からは自分一人でも出来ると思います」
「頼もしいですね」
「まだまだお役に立てることは少ないですが、ユリウス様やレイヴン達の負担を少しでも軽減出来るよう、これから頑張りますね」
「ありがとうございます」
レイヴンは僅かに思索すると「ワゴンは私が、お部屋の前までお運び致しましょう」と申し出てくれた。
ワゴンを押しながら室内に入ると、未だ長椅子でうな垂れたままのユリウスが、ティアリーゼの視界に飛び込んできた。
「ユリウス様、お茶をお運び致しました」
声を掛けると、すぐに顔を上げたユリウスが姿勢を正して座り直す。そんな彼を見て、良かった普通に元気そうだと、ティアリーゼは胸を撫で下ろした。
「もう淹れても良い頃合いですね」
ポットカバーを外して、ティーポットに入った紅茶をカップに注いでいく。
「ティアが手ずから注いでくれるなんて」
「そんな大層なことではございませんが」
「僕にとって特別なんだ、凄く嬉しいよ」
大袈裟な表現をされて、反動で所作がぎこちなくなりつつ、ティアリーゼは何とか2人分のお茶を注いだ。
「美味しい」
「薔薇とライチを混ぜた茶葉だと教えて頂きました。ここの紅茶は香りも良いですし、レイヴンの選んだ物に間違いはないですね。昨日の夜に頂いたハーブティーも、とても美味しかったですし。レイヴンはお茶の調合まで得意なんて、尊敬します。
庭で採れた物を中心に、睡眠の質を上げる効果のあるハーブなどが調合されているらしいですね」
「ティアが淹れてくれたから美味しい」
驚いてユリウスの方を見ると、互いに視線が絡み合う。赤紫の瞳が柔らかな色を纏っている。
「負担でなかったら、また僕にお茶を淹れてくれないかな?」
「も、勿論です。わたしなどでよければ」
「ありがとう。とても嬉しくて、幸せだよ」