妹に婚約者を奪われた私は、呪われた忌子王子様の元へ
雪像の理由
何故か気をよくしたユリウスが、確信を着いたように瞳を光らせた。
「三人は雪像に興味があるとみた」
「ユリウス様は雪像作りがお好きなんですね」
むしろ雪像が好きなのはユリウスの方だろうと思うティアリーゼに、彼は嬉々として説明を始める。
「実はユミール村で毎年行われる雪祭りの催しに、近年では雪像コンテストを開催しているんだ。村の一角にそれぞれの作品である雪像が並べ、観光客に楽しんで貰えるようになっている。祭りの目玉の一つというわけだ。ちなみに優勝した者には商品もでる」
「まあ、雪像コンテストですか」
「うん」
ティアリーゼは、ユリウスがただ雪像を作って遊んでいるのだと思い込んでいたが、違ったらしい。実は領主として領地の繁栄を思っての行動とのこと。
「そしてこの僕も去年に引き続き参加予定なんだ。これはその練習で作成した物。城の庭園にも、隅になら作っても良いと言われている。
去年は庭園に雪像を作りまくって、レイヴンに怒られたからな。庭の景観を損ねるなと。
僕としては、練習あるのみと思って頑張ったんだけどなぁ」
「当たり前です、庭園を変な雪像で埋め尽くさないで頂きたい」
「変とかいうな」
釘を指すレイヴンに、ユリウスは唇を尖らせた。
(怒られたのですね……確かに綺麗な庭園に、ユリウス様の無駄に個性的な雪像が乱立していては、台無しよね)
ティアリーゼが密かに納得していると、マシューが呟く。
「じゃ、じゃあレイヴンさんに怒られない程度に、隅に作ってみましょうかね」
「おお!やはり興味があったか、お互い優勝を目指して頑張ろうではないか!」
ガシッと自分の手を取るユリウス、その距離感の近さにマシューは瞠目した。
「ああそうだ、ティアをお茶の時間だと誘いに来たのだった。三人が僕の雪像に見惚れていたものだから、つい嬉しくて話し込んでしまった」
(見惚れて……?)
イエティに対する自分達の評価が、ユリウスの中でどんどん誇張されていきそうで、ある意味恐ろしかった。
「その……」
口籠もり、手をもじもじとさせるユリウスにティアリーゼは首を傾げる。
「どうかなさいました?」
「ユリウス様はティアリーゼ様が淹れて下さったお茶を、ご所望のようなのです」
レイヴンの説明に、ユリウスはこくこくと頷いた。何だか子供とその保護者のようだ。
「まあ、そうでしたの。でも、わたしよりレイヴンの挿れたお茶の方がきっと美味しいと思いますが」
ティアリーゼの言葉に、ユリウスは勢いよく首を左右に振って拒否する。
「ユリウス様が私の手ずから淹れたお茶よりも、極力ティアリーゼ様のお茶をご所望されるのです。我儘で申し訳ございません」
「我儘だなんてそんな……わたしの淹れたお茶でよろしければ……」
ユリウスがぱっと破顔した刹那──
どんっと鈍い響きと共に、ティアリーゼの視界は白に覆われ、目が開けていられなくなった。直後、突然の浮遊感に襲われる。
「な、なに……?」
事態を飲み込めない不安から、近くの物にしがみつく。ようやく瞼を開けられるようになると、自分がユリウスに抱きかかえられていると理解した。
どうやら浮遊感は抱き抱えられたことによるもので、ティアリーゼはユリウスにしがみ付いていたらしい。
「ユリウス様!?ど、ど、どうなさったんですかっ?」
狼狽しながらな辺りを確認すべく視線を落とすと、地面には穴が空いていた。
「!!!?」
ティアリーゼから声にならない悲鳴が上がる。
「ユリウス。貴様を倒しに来た」
真正面から知らない誰かの声が上がった。ティアリーゼが視線を前に向けると、蜂蜜色の髪にエメラルドの瞳を持つ青年が佇んでいた。
「三人は雪像に興味があるとみた」
「ユリウス様は雪像作りがお好きなんですね」
むしろ雪像が好きなのはユリウスの方だろうと思うティアリーゼに、彼は嬉々として説明を始める。
「実はユミール村で毎年行われる雪祭りの催しに、近年では雪像コンテストを開催しているんだ。村の一角にそれぞれの作品である雪像が並べ、観光客に楽しんで貰えるようになっている。祭りの目玉の一つというわけだ。ちなみに優勝した者には商品もでる」
「まあ、雪像コンテストですか」
「うん」
ティアリーゼは、ユリウスがただ雪像を作って遊んでいるのだと思い込んでいたが、違ったらしい。実は領主として領地の繁栄を思っての行動とのこと。
「そしてこの僕も去年に引き続き参加予定なんだ。これはその練習で作成した物。城の庭園にも、隅になら作っても良いと言われている。
去年は庭園に雪像を作りまくって、レイヴンに怒られたからな。庭の景観を損ねるなと。
僕としては、練習あるのみと思って頑張ったんだけどなぁ」
「当たり前です、庭園を変な雪像で埋め尽くさないで頂きたい」
「変とかいうな」
釘を指すレイヴンに、ユリウスは唇を尖らせた。
(怒られたのですね……確かに綺麗な庭園に、ユリウス様の無駄に個性的な雪像が乱立していては、台無しよね)
ティアリーゼが密かに納得していると、マシューが呟く。
「じゃ、じゃあレイヴンさんに怒られない程度に、隅に作ってみましょうかね」
「おお!やはり興味があったか、お互い優勝を目指して頑張ろうではないか!」
ガシッと自分の手を取るユリウス、その距離感の近さにマシューは瞠目した。
「ああそうだ、ティアをお茶の時間だと誘いに来たのだった。三人が僕の雪像に見惚れていたものだから、つい嬉しくて話し込んでしまった」
(見惚れて……?)
イエティに対する自分達の評価が、ユリウスの中でどんどん誇張されていきそうで、ある意味恐ろしかった。
「その……」
口籠もり、手をもじもじとさせるユリウスにティアリーゼは首を傾げる。
「どうかなさいました?」
「ユリウス様はティアリーゼ様が淹れて下さったお茶を、ご所望のようなのです」
レイヴンの説明に、ユリウスはこくこくと頷いた。何だか子供とその保護者のようだ。
「まあ、そうでしたの。でも、わたしよりレイヴンの挿れたお茶の方がきっと美味しいと思いますが」
ティアリーゼの言葉に、ユリウスは勢いよく首を左右に振って拒否する。
「ユリウス様が私の手ずから淹れたお茶よりも、極力ティアリーゼ様のお茶をご所望されるのです。我儘で申し訳ございません」
「我儘だなんてそんな……わたしの淹れたお茶でよろしければ……」
ユリウスがぱっと破顔した刹那──
どんっと鈍い響きと共に、ティアリーゼの視界は白に覆われ、目が開けていられなくなった。直後、突然の浮遊感に襲われる。
「な、なに……?」
事態を飲み込めない不安から、近くの物にしがみつく。ようやく瞼を開けられるようになると、自分がユリウスに抱きかかえられていると理解した。
どうやら浮遊感は抱き抱えられたことによるもので、ティアリーゼはユリウスにしがみ付いていたらしい。
「ユリウス様!?ど、ど、どうなさったんですかっ?」
狼狽しながらな辺りを確認すべく視線を落とすと、地面には穴が空いていた。
「!!!?」
ティアリーゼから声にならない悲鳴が上がる。
「ユリウス。貴様を倒しに来た」
真正面から知らない誰かの声が上がった。ティアリーゼが視線を前に向けると、蜂蜜色の髪にエメラルドの瞳を持つ青年が佇んでいた。