妹に婚約者を奪われた私は、呪われた忌子王子様の元へ

正式な

 ユーノが退室し、室内にはティアリーゼとユリウスのみとなった。

「行ってしまわれましたね」
「そうだ、ティアにはもう一つ話しておかないと」
「はい」
「王都に行ったら、僕達の婚約も正式に進む可能性が高い」
「婚約……」

 ユリウスは王都から遠ざけられているとはいえ第一王子である彼は、婚約や結婚は王の承諾がなければ正式には認められない。
 元はといえばリドリスとの婚約を解消させ、ティアリーゼにユリウスとの婚約を打診してきたのは王家である。

 王宮へ行けばついに、ユリウスの正式な婚約者として認められることとなるのか。
 ティアリーゼの胸中は期待と不安が入り混じっていた。

 ──次の瞬間、ティアリーゼは重大な出来事を思い出す。

 賑やかで、穏やかでもある日々の中で忘れつつあったが、置き手紙のみを残し、実家の屋敷を飛び出した経緯がある。

 元々このミルディンの城に来るのは確定事項だったものの、公爵家にいることが耐えられなくなっていたのが理由だ。


「わたし、実家を飛び出すような形でこの城に来てしまいましたから、この件について陛下がお怒りになられているかもしれません」
「それは問題ないよ」
「そう……なのですか?」
「ティアの元へレイヴンを派遣し、無事城へと迎え入れてすぐに、無事到着したと陛下へ手紙を届けてあるからね。ティアが来た当日に、陛下は報せを受け取っているよ」
「当日ですか」
「何たって、僕は魔法の天才だからね。手紙もその日のうちに王宮へと届けることができるんだよ。そして陛下からは後日『丁重に扱うように』との手紙を拝受した。ちなみにクルステア公爵家にも同様の手紙を送っているけど、特に問題にはなっていないよ」

「そうだったのですね……。ありがとうございます」

 自暴自棄になっていたとはいえ、今更ながら何て勝手な行動を取ってしまったのかと、後悔の念が押し寄せていた。

(お相手がユリウス様でなかったら、追い返されていたかも……)

 過去の自分を反省しながら、ユリウスの扱う魔法の便利さに、改めて感心をしめしていた。

「魔法って、とても便利なのですね」
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