悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜
プロローグ
断罪日の前日、私は婚約者であるカタルニア王国の第二王子、フェルディナンド王子から王宮内にある彼の部屋へと呼び出されていた。
全てゲーム通りのシナリオだ。
「メリアン、お前だろう、エレオノーラのドレスを燃やしたのは」
黒く焦げ、バラバラになったドレスの破片が証拠としてセンターテーブルに集められている。それを挟んで、私と王子はそれぞれ別のソファーに向かい合い座っていた。
明日は王宮で、フェルディナンド王子の二十歳の誕生日を祝う舞踏会が開催される。この国にとって王族の誕生日というものは一大イベントで国中の貴族たちが集まる。そんな舞踏会に、フェルディナンド王子は新人メイドのエレオノーラを参加させると異例なことを言い、彼女のためにドレスを作らせ、贈っていた。
そして、フェルディナンド王子の察しの通り、その特注のドレスを火の魔法を使い燃やしたのは私だ。
本来ならば、この後「いいえ、違います」といつも通りしらばっくれる。そして明らかな嘘をついたことでフェルディナンド王子からは呆れられ、部屋を追い出されてしまう。それが次の日、フェルディナンド王子から婚約破棄と国外追放を告げられる前に交わした私と彼の最後の会話のはずだった。
けれど今の私は、いつもの私とは違う。
「ええ、そうです」
そう罪を潔く認めた。
なぜならば、私は今朝急に思い出したのだ・・・自分の前世の記憶を。今生きているこの世界が、前世の自分がのめり込んでプレイをしていた、魔法が存在する架空の王国を舞台にした乙女ゲーム『ミスティック・ロイヤル』の世界であることを。そしてこのゲームの今後の展開を。
いつもとは違う正直な答えに「なんだと?」と、フェルディナンド王子は眉を潜めながら、意外そうな顔を見せた。
私は堂々と立ち上がりゆっくりとフェルディナンド王子の方へと近寄った。そして、どうしても憎めない顔を見上げるために跪き、ゲームでは告げられることの無かった、心のうちを告げた。
「殿下・・・初めて出会った日からずっと貴方様のことを慕っておりました」
今、ここがゲームの中の世界だと分かったからと言っても、私がこの世界で生きてきた十八年も、フェルディナンド王子に対する気持ちも嘘ではない。
この世界にメリアン・シュトルツと言う名で公爵家に生まれ、九歳の時に二つ年上のフェルディナンド王子と出会い、珍しい銀色の髪とアクアマリンのように青く輝く瞳に一目惚れをした。王子はあまり私に関心を持ってくれなかったが、ずっと一途に好きだった。政略結婚だとは言え、王子との婚約が決まった時は泣いて喜んだ。このまま、振り向いてもらえなくても、結婚すればいずれ愛してもらえるかもしれない。そんな気持ちで、結婚までの日々を待っていた。
しかしそんな淡い期待は突如、エレオノーラが王宮のメイドとして現れることでいっきに崩れ去る。
エレオノーラは、私の癖のある赤髪と違い、絹のような金色の髪と明るい笑顔を持ち、誰とでもすぐに仲良くなるような愛嬌のある人だった。そんな彼女とフェルディナンド王子は同い年なこともあり、階級の違いを超えて打ち解ける。二人がどんどん親密になり、その姿を見るたびに私の心はちぎれそうになった。嫉妬に狂ったあげく、二人の邪魔をするような言動を多々繰り返す日々。私を見てほしくて、どうにかしてでも構われたくて、私は自ら嫌われ役を選んだ。そうして私はゲームのシナリオ通りの悪役令嬢になってしまった。今、考えると・・・そもそもそうなるように話が進んでいくようになっていたのだから、当たり前なのかもしれないけれど・・・。
シャンデリアの光でキラキラと光る銀色の髪にそっと触れた。
ああ・・・この髪にずっと触れてみたかった。
「殿下のことが好きすぎて、どうしようもなかったのです」
悪役令嬢の恋なんて、報われることはない。それならば・・・
「きっと、今日が最後。それならば、悪役らしく足搔かせていただきます」
私の告白に終始戸惑うフェルディナンド王子の不意を突き、王子をソファーの上で押し倒した。金色の瞳を濡らす涙は粒となり王子の顔にポタ、ポタと零れ落ちる。その隙に、油断している唇を奪った。
「な、何をする」
フェルディナンド王子は目を丸くし、驚いている。最初に会った日以来、初めてまっすぐに目を合わせてくれた。今、涙で視界がぼやけていることが惜しい。
私はこの世界では純潔だったが、前世の記憶から、知識は豊富だ。
だから分かる。
この後どうすればよいのかも、・・・そして男は愛がなくても女と交われることも。
「殿下、あなたはただ気持ちよくなっていればよいのです」
全てゲーム通りのシナリオだ。
「メリアン、お前だろう、エレオノーラのドレスを燃やしたのは」
黒く焦げ、バラバラになったドレスの破片が証拠としてセンターテーブルに集められている。それを挟んで、私と王子はそれぞれ別のソファーに向かい合い座っていた。
明日は王宮で、フェルディナンド王子の二十歳の誕生日を祝う舞踏会が開催される。この国にとって王族の誕生日というものは一大イベントで国中の貴族たちが集まる。そんな舞踏会に、フェルディナンド王子は新人メイドのエレオノーラを参加させると異例なことを言い、彼女のためにドレスを作らせ、贈っていた。
そして、フェルディナンド王子の察しの通り、その特注のドレスを火の魔法を使い燃やしたのは私だ。
本来ならば、この後「いいえ、違います」といつも通りしらばっくれる。そして明らかな嘘をついたことでフェルディナンド王子からは呆れられ、部屋を追い出されてしまう。それが次の日、フェルディナンド王子から婚約破棄と国外追放を告げられる前に交わした私と彼の最後の会話のはずだった。
けれど今の私は、いつもの私とは違う。
「ええ、そうです」
そう罪を潔く認めた。
なぜならば、私は今朝急に思い出したのだ・・・自分の前世の記憶を。今生きているこの世界が、前世の自分がのめり込んでプレイをしていた、魔法が存在する架空の王国を舞台にした乙女ゲーム『ミスティック・ロイヤル』の世界であることを。そしてこのゲームの今後の展開を。
いつもとは違う正直な答えに「なんだと?」と、フェルディナンド王子は眉を潜めながら、意外そうな顔を見せた。
私は堂々と立ち上がりゆっくりとフェルディナンド王子の方へと近寄った。そして、どうしても憎めない顔を見上げるために跪き、ゲームでは告げられることの無かった、心のうちを告げた。
「殿下・・・初めて出会った日からずっと貴方様のことを慕っておりました」
今、ここがゲームの中の世界だと分かったからと言っても、私がこの世界で生きてきた十八年も、フェルディナンド王子に対する気持ちも嘘ではない。
この世界にメリアン・シュトルツと言う名で公爵家に生まれ、九歳の時に二つ年上のフェルディナンド王子と出会い、珍しい銀色の髪とアクアマリンのように青く輝く瞳に一目惚れをした。王子はあまり私に関心を持ってくれなかったが、ずっと一途に好きだった。政略結婚だとは言え、王子との婚約が決まった時は泣いて喜んだ。このまま、振り向いてもらえなくても、結婚すればいずれ愛してもらえるかもしれない。そんな気持ちで、結婚までの日々を待っていた。
しかしそんな淡い期待は突如、エレオノーラが王宮のメイドとして現れることでいっきに崩れ去る。
エレオノーラは、私の癖のある赤髪と違い、絹のような金色の髪と明るい笑顔を持ち、誰とでもすぐに仲良くなるような愛嬌のある人だった。そんな彼女とフェルディナンド王子は同い年なこともあり、階級の違いを超えて打ち解ける。二人がどんどん親密になり、その姿を見るたびに私の心はちぎれそうになった。嫉妬に狂ったあげく、二人の邪魔をするような言動を多々繰り返す日々。私を見てほしくて、どうにかしてでも構われたくて、私は自ら嫌われ役を選んだ。そうして私はゲームのシナリオ通りの悪役令嬢になってしまった。今、考えると・・・そもそもそうなるように話が進んでいくようになっていたのだから、当たり前なのかもしれないけれど・・・。
シャンデリアの光でキラキラと光る銀色の髪にそっと触れた。
ああ・・・この髪にずっと触れてみたかった。
「殿下のことが好きすぎて、どうしようもなかったのです」
悪役令嬢の恋なんて、報われることはない。それならば・・・
「きっと、今日が最後。それならば、悪役らしく足搔かせていただきます」
私の告白に終始戸惑うフェルディナンド王子の不意を突き、王子をソファーの上で押し倒した。金色の瞳を濡らす涙は粒となり王子の顔にポタ、ポタと零れ落ちる。その隙に、油断している唇を奪った。
「な、何をする」
フェルディナンド王子は目を丸くし、驚いている。最初に会った日以来、初めてまっすぐに目を合わせてくれた。今、涙で視界がぼやけていることが惜しい。
私はこの世界では純潔だったが、前世の記憶から、知識は豊富だ。
だから分かる。
この後どうすればよいのかも、・・・そして男は愛がなくても女と交われることも。
「殿下、あなたはただ気持ちよくなっていればよいのです」
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