悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜
「ここだ」
手付かずのようで、歩きやすいように整備された森の中を十分ほど歩いたところに、広場のような場所があった。そこには太い丸太が転がっていて、王子はメリアンにそこで座っているように伝えた。
「リリス、ルカ、私について来なさい」
王子は、メリアンから存分に様子が見える程度離れた場所にルカとリリスを連れていくと、二人を自分の両脇に立たせた。
「これから、二人に精霊魔法の基礎を教える。よく見て、そしてよく聞くのだ」
二人にそう伝えると、王子は深く呼吸をし、真剣な表情で手を合わせた。そして低く力強い声で魔法を唱え始めた。精霊を呼ぶ呪文は、一般的な言葉とは異なり、特別な音の調和と響きを持っている。
精霊たちとの意思疎通は、言葉よりも音の方が大事とされており、高度な魔法を使おうと思えば思うほど、音の高低や響きなどの使いわけが必要になる。それゆえ、精霊魔法の使い手は音の微妙な違いを感じ取ることができる必要があった。
精霊魔法は、精霊魔法の属性で生まれた者だけが持っている絶対音感がなければ、その力を覚えることも、使うことも不可能なため、精霊魔法の使い手は非常に限られた人々であり、彼らは特別な存在として歴史上この国では尊敬されていた。王族は古くから精霊魔法を操ることができる家系で、この力を継承し、守ってきた。