悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜

 二人は今見たことを一所懸命自分たちで実行に移そうとした。しかしそう簡単なことではない。何度も瞼を閉じ、心を静め、精霊たちと会話を試みる。もともとルカは水の精霊から、リリスは花の精霊から好かれていたこともあり、その二つの精霊はすぐに二人の元へ寄ってきた。しかし他の精霊との繋がりは今まで薄かったため、なかなか言うことを聞いてくれない。それでもめげずにじっくりと、じっくりと会話を重ねていく。すると少しずつ、言葉を超えた心の交流が生まれていくようだった。二人は陽だまりの中にいるような心地よい感覚に包まれた。

「わーっ!すごい!」

 ルカは、生まれつき魔法の波動を感じる能力が高く、精霊たちとの共鳴をより深めていく。今まで苦手だった風の精霊魔法もうまく使えるようになり、水の精霊と一緒に小さな雨雲を作り、雨を好きな場所に降らせることが出来るようになった。

 リリスも、精霊たちとのコミュニケーションをよりスムーズに行えるようになってきた。日陰で成長の乏しい草花に、土の精霊魔法で植物の成長を促し、光の精霊魔法の力を借りることで光合成を行い、咲かずに枯れ行く運命だった花を咲かせた。なんともリリスらしい魔法の使い方だ。

 二人は楽しそうに新しく習得した魔法をメリアンに向かって披露する。後で二人を見守る王子も誇らしげだ。

「二人ともすごいわ!」

 笑顔でそれを見守っていたメリアンは、大拍手をして、二人を称える。

 だが、同時に気持ちが重くなっていく。

 二人の成長は嬉しい・・・嬉しいけれど、一人きりで、今まで子育てをしてきて、自分だけでこれからも二人を育て上げようと思っていたのに、こうあっさりと、王子が現れたとたん、自分が出来ないことをやってのけてしまう。

(でもそれは悔しいという気持ちとは違う・・・)

 メリアンは自分が抱く複雑な感情に向き合わざるをえなかった。王子の存在は、二人の成長を促すだけでなく、メリアンにとっても幸せな時間をもたらしてくれている。

 こんな時間がずっと続いてくれたら・・・そう思わずにはいられなかった。

< 23 / 56 >

この作品をシェア

pagetop