悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜

「お前は、まだ勘違いしていたのか。・・・ああ、もちろんだ。お前たちが無事で、幸せに暮らせるように、私は全力で支援する。そのためにお前たちをここに連れてきたのだ。」

 これからも子供達を育てていけること、そして自分は処刑されないことに心底ほっとして、涙がこぼれた。

 王子はそのことに気づくと、焦った様子を見せながらも、溢れる水滴を指で拭った。

 それから何も言わずにただ寄り添うように、二人は静かに子供たちの様子を眺めながら過ごした。なんだかふわふわした気持ちだ。

 しばらくして、王子が立ち上がると、メリアンの手をそっと取る。
 メリアンは顔を赤くさせ、王子の方を見ると、王子は困ったように目を逸らした。

「そろそろ子供たちも疲れただろう。」

 名残惜しいような時間。
 けれど、確かに子供たちは疲れ切って、地面にペタっとお尻をつけ座り、それに対してエリオットとモーリスはどうしようかと悩んでいるように見えた。

「二人を見ていただき、どうもありがとうございます。」

 メリアンは子供たちの元へ駆け寄ると、二人に丁寧に感謝の言葉を述べた。エリオットは「お二人とも、素晴らしい魔法でございました」と褒めた。エリオットの言葉に双子は喜び、エリオットの鍛えられたバキバキの脚をそれぞれ片方ずつぎゅうっと抱きしめた。40過ぎだが未だ独身で、子供にあまり慣れていない様子のエリオットはその行動に少し戸惑ってはいたが、どこか嬉しそうだった。

 その後、一行は宮殿へと戻り、メリアンたちを部屋まで送った。途中、リリスはヘトヘトで歩くのもままならなかったので、王子から担がれていた。そんなリリスを羨ましそうに見るルカに気づいた王子は、もう片方の腕で、ルカも抱き上げた。ルカは王子の腕の中で嬉しそうにはしゃいでいた。

 部屋に入ると、メリアンは子供たちに「お昼寝の時間にしようか。」と声をかけた。

 大量の魔力を使い疲れ切った子供たちは、すぐさまメイドに動きやすい服に着替えさせられた。二人は着替えると、即自分からベッドに寝っ転がり、同時に寝息を立てた。メリアンは二人を見守りながら微笑みを浮かべ、毛布をかけてやった。

「お疲れ様。おやすみ。」

 そしてやさしく二人にキスをして、彼らがぐっすりと眠りについたのを確認する。メリアンは子供たちがぐっすりと眠る横で、深い安堵に包まれた。

(私もこれでやっと、眠れる・・・)

 メリアンは、自分が処刑されると思っていた長い間、ずっと恐怖心に苛まれていた。でも先ほどの王子からの言葉を聞いて、彼女の命が保証され、心の重しは一気に取り払われた気分だ。

(私は生きて、これからも子供たちと一緒に暮らせるんだ!)

 メリアンは、やっと心の底からほっとすることができ、まだ白昼だというのに、深い眠りについた。そしてずっと寝不足だったこともあり、次の日の朝まで起きることはなかった。
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