悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜
元々のびのびと育てられ自由奔放な性格だったルカとリリスは、十年弱、王宮によく通っていたメリアンよりも、この環境にすぐに順応することができた。そんな二人にとって一番の楽しみは三時のおやつの時間だ!
「わー、こんなにおおきなケーキはじめてぇ!ふわふわクリームがすごーい、いっぱーい!」
ルカは、テーブルにおかれた大きなケーキを前に、大はしゃぎ。周りの大人たちも、その姿を微笑ましく見つめていた。
「でも、もうちょっとちいさいケーキのほうがたべやすいなぁ。」
リリスは残念そうに言う。メイドのアンジェリカが「リリス様のお好きな分だけお切りしますよ。」と声をかけると、リリスは恥ずかしそうに、でも嬉しそうに頷いた。
その後、アンジェリカが丁寧にリリスのためにケーキを小さめに切って、プレートに盛り付けた。ルカには、ルカの希望通りの大きなピースを。周りの大人たちは、子供たちが可愛くて仕方ない様子で、口元にちょっぴりクリームがついただけで、すぐに拭き取ってあげるなど、過保護な程に世話を焼いていた。
二人は彼らを温かい目で見守る大人たちに囲まれながら、ますます王宮での生活に慣れていった。今まで触れてこなかったメリアンではない人間との会話を通じて、新しい言葉や知識をスポンジのように吸収し、びっくりするほど日々成長している。
そんな子供たちは、おやつの時間だけでなく、この広々とした王宮中で遊ぶことも大好きだ。王宮の間取りもだいぶ頭にいれ、二人で・・・または他の大人も巻き込みかくれんぼで遊ぶことが二人のブーム。
最初のうちは自分たちだけの部屋だけで隠れていたのだが、どんどんと範囲が広がっていって、今日はもう呼んでも見つからないため、メリアンは王宮中を探し回っていた。
「ルカ、リリス、どこにいるの?」
返答はない。危険はないはずだが、人の出入りは多いし、部屋数も数えられないほどある。
(どこかに迷い込んでないといいけれど)
メリアンはあちらこちら探し回った末、王子の部屋のさらに奥にある部屋のドアが少しあいているのに気づき、近づいた。普段この部屋の扉は閉まっていて、誰の部屋なのかも、なんのための部屋かも分からずだった。
メリアンはそっと中を覗き込んだ。中に人がいる気配はないものの、とても広い部屋なので、とりあえず「お邪魔いたします・・・」と言い、中に入ってみることに。
部屋の中に入ると、目に飛び込んできたのはゴージャスな内装と、豪華絢爛な装飾品たちだった。しかし、その中でも目を引いたのが、壁の中心にかかっているポートレイトだ。それは、黄金に光る金髪と、エメラルドの瞳が美しく描かれた女性の油絵だった。