悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜
メリアンは目を覚ました。
視界の中には、心配そうにメリアンを見つめるフェルディナンド王子がいた。
「フェルディナンド様…」
メリアンは自分がずっと勘違いしていたことに今になって気づいた。
今まで、自分が転生したこの世界は、エレオノーラとフェルディナンド王子を中心に回っている世界だと思っていた。けれどここは、エレオノーラがヒロインで、ハンネス王子が攻略対象の世界だったのだ。
「メリアン・・・大丈夫か?」
「ええ。」
「良かった。」
フェルディナンド王子はほっとしたように呟き、メリアンの手を強く握った。なんでだろう、それがわかると、王子の行動が自分へ愛のあるもののように感じてしまう。
メリアンは堪らなくなって、体を起こした。そして美しすぎる青い瞳を見つめた。
「殿下」
「なんだ」
「私は…、私はあなたをお慕い申し上げております。」
フェルディナンド王子は、思いもよらぬタイミングで降ってきたメリアンの突然の告白に顔を赤くさせた。そしてその顔を空いた方の手で覆い隠した。
(もしかして恥ずかしがっているのだろうか。)
今までずっと、メリアンから顔を逸らしていたのは、メリアンが嫌いだからだと思っていた。けれど、もしそうではなかったら・・・?そう思うとメリアンはその答えが知りたくて堪らなかった。
「どうか、あなた様のお心をお聞かせ願えますか。」
「…はぁ。お前の直球は怖い。」
「・・・」
フェルディナンド王子は、何度もため息をついていた。そして意を決したように再び口を開く。
「王子たるもの、常に相手に本心を見抜かれてはいかぬため、平常心でいなければならない。私はいつも、お前の前では、立派な王子でいたいのだ。けれど、お前はいつだって私の平常心を乱す。」
フェルディナンド王子は気持ちを整えるように、深い溜め息をついてから、再びメリアンに向き直った。
「私がお前に対して抱く感情は、お前が抱くものと同じ・・・またはそれ以上だ。」
メリアンの心は、フェルディナンド王子の言葉に震えた。
「ほ、本当ですか?」
メリアンの目は涙で潤んでいた。フェルディナンド王子はメリアンの手を取って軽くキスをした。メリアンの視線は、もうずっと王子に向けられている。
「あまり、見ないでくれ。」
「・・・どうしてですか?」
「お前に見つめられると、顔がこう・・・赤くなってしまうのだ。格好がつかぬ。」
王子がとことん自分と目を合わせるのを避けていた理由は…もしかして? もう、なんて不器用な人なのだろう、とメリアンは思った。
そして愛しさが倍増する。
「殿下は、お綺麗です。どんなお姿でも。」
メリアンは、感極まってフェルディナンド王子に飛び込んで抱きつくと、フェルディナンド王子は、しっかりとメリアンを受け止めた。
「お・・・お前も、初めて会った日から・・・ずっと・・・」
「ずっと?」
「・・・ずっと・・・」
「・・・はい。」
「・・・か・・・可愛い。」
どんな顔をして言っているのだろうかと、顔が見たい。けれどフェルディナンド王子は見せまいと、メリアンを強く抱きしめる。それでも、やっとのことで首を曲げると、王子の耳は真っ赤になっていた。