悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜
 ー 六年後 ー

「王子、先日ボルタス国から不法入国してきたと言う男が、赤髪の美女について話していたと言うのを、看守が聞いたと言っております。国境沿いにあるワーテルという小さな村でだそうです。」

 この六年間、このような目撃情報は多数寄せられたが、どれもハズレだった。期待してしまう分、落胆してしまう。エリオットが得た今回の情報も、もしかしたら違うかもしれない。けれど、小さな可能性でも信じることしか、今はもう出来ないのだ。

「殿下、その後その者に詳しく聞き出したところ、・・・その女性は、銀色の髪の小さな双子を連れているとも。」
「双子・・・?」
「・・・きっと何かの間違えかもしれません」
「いや・・・今すぐに出る準備を。」
「は、はい!」
「モーリス、お前はもしものための、準備を。子供は・・・五歳であろう。」

 モーリスや周りの家臣は驚いた顔をした。しかしすぐに頭を下げ、「かしこまりました、殿下」と告げた。
< 38 / 56 >

この作品をシェア

pagetop