悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜
 その後、メリアンはシュトルツ公爵を、自分たちの部屋へ連れて来た。

「ルカ、リリス、さっきはちゃんと紹介できなかったけれど、この方は私の父上、つまりあなたたちのおじい様なのよ」

 ルカとリリスは、メリアンの言葉に少し緊張した表情でシュトルツ公爵を見つめた。シュトルツ公爵は微笑みながら近づき、子供たちに親しみやすく話しかける。

「ルカ、リリス、こんにちは。先ほどは怖がらせてすまなかった。」
「おじいさま・・・!?」
「おめめ、おかあさんといっしょ。」
「ほんとだ、きんいろ、きらきら。」

 シュトルツ公爵は子供たちの無邪気な言葉に微笑んで頷いた。

「そうだ、お前たちの母の瞳は私によく似ているのだ。」

 シュトルツ公爵は子供たちともっと親しくなるために、一緒に遊ぶことを提案した。

「ルカ、リリスと言ったな。どうだ、私と一緒に遊ぼうか?」

 子供たちの顔が明るくなり、「うん!」と元気に答えた。シュトルツ公爵はメリアンにも笑顔で語りかけた。「メリアン、良いか。」

 メリアンも嬉しそうにうなずいた。そして、そろって中庭へ向かった。マグノリアの花はもう散り、代わりに紫陽花が咲き誇っていた。淡いピンク、青、紫、そして白といった美しいグラデーション。新鮮な空気が庭を包み込んでいる。紫陽花の花びらには水を撒いた後の水滴が残って、太陽の光を受けると、まるで宝石のように輝いて見えた。

 シュトルツ公爵が子供たちと一緒に花を観察したり、駆け回ったりしている様子をメリアンとフェルディナンド王子は寄り添いながら眺めていた。

「あの子たちは、本当に私によく似ている・・・」
「ええ。」
「けれど、笑顔はお前にそっくりだ。とても・・・可愛い。」

 フェルディナンド王子は困ったような顔をしながら片手を顔に置いていた。

「無理されなくても・・・」
「いや・・・伝えたいんだ。本当は、ずっと伝えたかった。後悔したのだ。なんせ六年間・・・どんなに思っていても、言いたいことがあっても、伝えられなかったんだ・・・。」

 フェルディナンド王子は顔を染めながら、メリアンの顔を見た。
 メリアンが姿を消したのは、自分のためでもあったが、もちろんフェルディナンド王子のためでもあった。けれど、こんなに彼を苦しめていたのだと、メリアンは胸が痛くなった。
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