悪役令嬢は王子との秘密の双子を育てています 〜見つかったので処刑されるかと思いましたが、なぜか溺愛されました〜
夕方になる前に、子供たちのもとへと戻った二人。子供たちは、モーリスからチェスを教わっていた。モーリスとルカが対戦中だ。二人の登場にいち早く気づいたのはリリスだ。
「おかあさん、おうじ、いた!」
リリスは嬉しそうに二人の間に入った。フェルディナンド王子はリリスを抱き上げた。
「いい子にしてたかい?」
リリスは頷く。そして王子の顔をじっと見つめた。王子はどうした?と言うように首をかしげた。
「おうじのおめめ、ルカとそっくり。リリスと、ルカもそっくり。リリスとルカとおうじ・・・にてるってみんなに言われる。」
突然の言葉にフェルディナンド王子は返事に困っていると、ルカも続けた。
「おじいさまと・・・おかあさんもにてる。」
『父親』という存在を今まで認識していなかったであろう子供たちは、メリアンの父に会うことで、そのことについて考えさせられたのだろう。きっと二人でも話し合っていたのかもしれない。
リリスは少し考えた顔をし、でもまっすぐにフェルディナンド王子を見つめながら聞いた。
「おうじはリリスとルカのおとうさまですか?」
控えめなリリスだが、唐突に驚くようなことを直球で言うところはメリアンに似ていた。
フェルディナンド王子はリリスを下ろした。そして、リリスとルカ、どちらもいっぺんに見るように、二人の背丈に屈みながら訊ねた。
「二人は私を父だと思ってくれるのかい?」
「ぼく・・・おうじがおとうさまだったらうれしい。」
「リリスも。おうじ、やさしいし、かっこいい。まほうも、おうまもじょうず。」
「そうか。」
フェルディナンド王子は二人をいっぺんにギュッと抱きしめた。
「ルカ、リリス。ありがとう。」
泣きそうな声だった。そして深く深呼吸をし、続けた。
「そうだ、私はお前たちの父だ。今まで一緒にいられなくてすまなかった。けれど、これからは、ずっとお前たちの側にいたいと思っている。お前たちと父親として、お前たちの成長を近くで見守らせてくれないか?」
その様子をそばで見ていた誰もが目に涙を浮かべて三人の様子をみていた。メリアンも。
リリスとルカは笑いながら「いいよ。」と答えた。周りがなんで泣きそうな顔をしているかもよく分からずに。けれど、それは悲しい涙ではなく、嬉しい涙だということを子供ながらにも感じとり、二人は嬉しそうにそのまま王子の腕の中で抱きしめられた。