いつどこで誰が何をした


僕らが使っていた予備の教室は立花のえげつない死体があるのでみんなが嫌だと言った。
だから元の教室、つまりは野々村が死んだ方の教室へ移動する。

教師は誰もいないし、鍵なんかついていない。
入ろうと思えば入れる。

野々村の死体は片付けられていて血もある程度は掃除されているが、茶色く濁っている壁はもう取れないだろうな。


「ひかる…さっきの、どういうことだ?」
片桐が教室に入って早々に言った。

「そのまんまだよ。入力内容を公開しちゃダメってこと。立花は死ぬ直前に自分が何を入力したかを言った。多分…立花が死んだ原因はそこだと思う。
確かにゲームとしてはルール違反だからね。ルールに反したら死ぬ。返信しないと死ぬってのと一緒だよ」


気づくのが遅かった。
でもこれに気づくには誰かが犠牲にならないといけなかった。
その役を彼が買って出てくれた。

野々村が死ぬ前に、まだこのゲームの恐ろしさを知る前に、誰も入力内容を口にしなかったのは奇跡だ…

…いや、もしかしたら時川は…
僕にはどうしても返信せずに死んだとは思えない彼女。
もしかしたら時川は入力内容を喋ってしまったのかもしれないね…


「そうか…わかった。みんな…聞いてたよね。そして立花の最期を見ていたよね。何があっても内容を喋っちゃだめだ…それから…」

片桐が改めて注意要項を話し出す。
クラスメイトの表情はどれも死人同然のようで、生気を失っていた。



僕は窓の方へ目を向けた。



……。





あっっぶなああああーっ!!


冷や汗がどっと出た。


うっわ
まじで危なかったー!


あの時立花が死んでなかったら僕が死んでたかもしれない。

山野に『飛び降りた』って入力したの僕なんだって、実験のためとはいえごめんって言おうと思ってたけど…

危ない危ない。
言っちゃダメだ。

もしかしたら僕にも主人公補正が付いてるのかもしれない…なんて。


ほっと胸を撫で下ろす。
そして立花が座るはずの空席を横目で見た。


ありがとう立花。
教えてくれて。

そして

代わりに死んでくれて。



「…ひかるさん?」



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